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女性獣医師の働きにくさは何が原因か?~ワークライフバランス~

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女性獣医師の本音トーク その9 特別編 / 女性院長

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

女性獣医師の働きにくさは何が原因か?

匿名女性院長
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ワークライフバランスで悩むことが多い女性獣医師

 この度、女性獣医師の働き方などについて執筆する機会をいただきました。さて、何を書いていこうかと思い、ネットで「女性獣医師」で検索してみると、驚くほどヒットしました。

 働き方、結婚、キャリアプランなどについてのページが多く見つかりました。

 

 結局、女性獣医師はワークライフバランスで悩むことが多いにもかかわらず、解決が難しい状態なのかなという感想を持ちました。

 

 

 このように書いている私自身、大学を卒業し獣医師として26年目を迎えます。その間に退職、就職、転職を繰り返し、子育ても経験しましたが、女性が獣医師として勤務していくのは難しいと何度も感じました。

 

 私が大学に入学したころは男性の方が圧倒的に多く、男女比は9:1だったと記憶しています。私が進学した大学だけでなく、全国的に同様の割合でした。

 しかし今や大学卒業時の男女比は1:1になっています。圧倒的に女性の比率が多くなっています。

 

 

 統計によると、20~40歳代の獣医師の男女比は産業動物以外の分野(公務員、小動物臨床、企業など)では、男女比はほぼ1:1です。しかし50代より上になると、男女比が4:1というのが現実です。

 先に紹介した卒業時の男女の比率は、獣医師として働いている獣医師の構成比にも反映しています。

 

 更に統計を見ていくと、20~50歳代の女性の無職の割合が男性に比べて非常に多く、特に30~40歳代の獣医師免許を持つ女性の無職の割合の多さが目立ちます。20~50歳代は一般的に子育て世代と呼ばれており、この年代での女性獣医師の働き方の難しさを示しているかもしれません。

 

【編集部・注】


 匿名院長が参考にされている「農水省のデータ」はこちらです。


https://www.maff.go.jp/j/council/zyuizi/keikaku/attach/pdf/040304-2.pdf

様々なライフイベント、仕事と家庭の両立…女性獣医師が抱える多くの悩み

 以前に比べると現在は女性獣医師が多く、かつての男性獣医師中心の状態から大きく変化をしています。しかし、獣医業界をけん引してきた年齢層には男性が多く女性獣医師の現状に気付くことができないかもしれません。

 

 男女平等を実現していくために多くの法律が整備されましたが、やはり家庭内の仕事、つまり家事のウェイトは女性の方が重いでしょう。

 

 

 結婚、妊娠、子育てといったライフイベントは女性獣医師にとって切り離せないものです。特にこの時期に仕事、家庭とのバランスがうまく取れなくて悩むことが多くなりがちです。子どもの病気、学校行事、学校の長期休みなどで仕事の都合を変更しなければならないこともあります。

 核家族化が進めば、「よろしくお願いします」と子どもを頼める双方の両親が不在ですので、誰かに頼む必要が出てきます。急に頼むことができる人が見つからないことなどを想定すると、前もって準備をしておかないと頭を抱えて離職を選択することになります。

 

  しかし、過酷な受験勉強を経て獣医学科に入学し、大学生活を6年間、そののちに獣医師国家試験を受験する。長きにわたり努力してきた日々を、ほとんどの女性が抱える子育て中の問題を理由に活かせないのは非常にもったいないと思うのです。

 

 そして、この時期に起こりがちな悩みを解決していくことが、女性獣医師が長く仕事を続けていくためのネックになると考えます。

 

 例えば、勤務時間に対する柔軟性、子どもの体調不良が理由で休むことに対する罪の意識を変化させる、雇用者・スタッフの意識の変革などが必要不可欠でしょう。

 従来の動物病院の雇用形態や、勤務時間にこだわってしまうと人財を失います。

 

 

 女性獣医師の人口が多くなった現在、男性獣医師への対応を女性獣医師に当てはめてしまうとワークライフバランスが取れなくなってしまい、勤務を続けることが困難になります。

 その結果、離職を選択してしまい獣医師不足を招いてしまいます。

 

 

 今後は、ワークライフバランスを重視して離職者を少なくすることに成功した業界の事例などを紹介しながら、獣医師業界の働き方改革の一助になるような記事をお届けしたいと思います。

 

 

 

【追記  コンサル・西川からのコメント】

 この記事の中に、「女性が獣医師として勤務していくのは難しいと何度も感じました」とあります。

 匿名院長は、獣医師としての26年間で、働きにくさの経験を「何度も」と強調して書かれていることから、女性獣医師の働きやすさについては院長やその他のスタッフ(特に男性)がこれまで深刻な問題としては捉えてこなかったことが分かります。

 

 匿名院長は「この状況がなんとか変わってほしい」とミーティングの中で仰っておられましたが、事業承継コンサルタントとして多くの動物病院を訪問して気付くのは、「若い院長や勤務医は変わってきている」ということです。

 

 私には、理解ある院長とスタッフを増やしていけそうだという感覚があります。

 

 この女性獣医師の働きにくさについて、女性獣医師がこれまで自分の心の中に閉じ込めてきた思いをこうして原稿として出してくださることが、「そうだったのか」と気付いて改善に努める院長を増やすことにつながるものと考えています。

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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。