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女性獣医師の本音トーク その2(①働く現場の生の声+②院長への提言)

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女性獣医師の本音トーク その2(①働く現場の生の声+②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオ が独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

離職は獣医師の仕事の特殊性が関与している
回避は病院全体の業務改善の必要あり

匿名・女性獣医師(公務員→パート勤務医→時給公務員)

なぜ女性獣医師の離職率が高いのか?

 これは、「家事育児は女性の仕事」という考え方がまだまだ根強く残っていることが、一番大きな理由であると考えています。

 公務員であっても、男性の育児休業の取得率は非常に低く、私の夫も取得を検討していましたが、上司の反対に合い、断念した経験もあります。

 必然的に、女性の負担が大きくなり、出産や育児、または介護に伴い、仕事を続けていくことが困難になる場面が少なからず出てきます。

 獣医師の場合、その仕事の特殊性も大きく関与すると考えます。

 獣医師が治療する動物は多種多様で、骨格や内臓の構造、食事や生活様式も異なる上、診療科目は、内科、外科、整形外科、皮膚科、耳鼻科、眼科、歯科…と多岐に渡り、加えて、調剤や事務等も行うことも少なくありません。

 

 また、患者は言葉を話すことができないため、オーナーからの聞き取りが非常に重要になります。

 幅広い知識と技術、コミュニケーション能力が必要とされ、それらを日々更新していかなければなりません。

 診療業務だけで、体力知力を使い果たし、帰宅後は、家事、育児または介護に追われ、その日の業務を振り返ったり、知識を補うために文献や書籍を見返す時間を取れなかったり、といったことは、致命的な問題です。

 

 しかし、そういった勉強の時間は「勤務時間外に自己の裁量で行うべき」という雰囲気があることは否めません。

 そのため、それができない人は獣医師を続けていくべきではない、という自己判断に陥ってしまうのではないでしょうか。

 

 また、自分が勤務時間を短くすることで生じてしまう他の獣医師への負担増加や、子どもの急な体調不良時に休みをとれないことへのジレンマ等も、大きなストレスとなります。

 

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女性を働きやすくするための病院側への提案

 そういった離職を回避するためには、病院全体の業務改善を行う必要があるかと思います。

 家庭の事情に配慮した勤務体制を組むことはもちろんですが、どの獣医師も等しく、仕事以外の時間を大切にできる勤務を目指すべきです。

 家事や育児、介護等に追われるだけでなく、ただひたすらに休む、趣味に没頭する、旅行をする、等々、全員が仕事以外の何かを、勤務日であってもできる時間を取れるようであれば、子育てや介護を担う女性獣医師も、気兼ねなく働ける職場環境になるのではないでしょうか。

 

 具体的には、

  • 急患以外は完全予約診療とし、予約を詰め込み過ぎない。
  • 1人くらい何らかの理由で休んでも、診療が回る体制を作る。
  • 全獣医師が、勤務の中で知識や技術を習得することができる時間を設ける。
  • 育児や介護を担う獣医師以外の獣医師が、時間外勤務に追われることがないようにする。
 そういった職場であれば、離職率は下がると考えています。

 子育て世代の女性獣医師に絞った対策としては、大きな病院であれば、事業所内保育所の併設、小さな病院でも、有事の際にはシッターを雇ったり、職員が交代で子どもの世話を行ったりできるようにすることも、大きなメリットになると思います。
 コロナ禍においては、保育所内の病児・病後児保育が利用できず、熱が無くても風邪症状があれば保育所や学校を休ませなければならないこともあります。
 そのような時、病院に子ども連れて行くことができれば、格段に働きやすくなります。

 また、女性獣医師の多くは、出勤前や帰宅後、家事や育児に追われます。

 

 遅刻しないように家族を起床させ、送り出し、毎食の献立を考え、食事を作り、子どもの宿題をチェックし、明日の持ち物を揃え、機嫌を損ねないそうに、且つ、寝不足にならない時間に就寝させるため、起きている間中分刻みのスケジュールをこなしています。

 配偶者や親と分担できれば良いのですが、多くの家庭では、女性が時短勤務や定時退社をする一方、夫は定時に帰れる日は少なく、ワンオペレーションで家事育児をしていると思います。

 家事育児等の代行サービスを利用することができれば、心身の余裕が生まれますが、裏腹に金銭面では余裕が無くなってしまうため、「そこまでして働く意味が無い」と考えてしまう人も多いかと思います。

 

 様々なサポートサービスに対する補助制度があれば、家庭と仕事の両立を支援でき、長期的な人材育成・獣医師確保のために有効ではないかと考えます。



 最後に、獣医師派遣登録制度を提案いたします。


 家庭の事情で臨床現場を離れているものの、いずれは復帰したいと考えている獣医師に登録してもらい、希望する地域、時間、期間をマッチングして、人手が足りない動物病院に派遣する制度です。

 単発や短期で働きたい人、求職しているが情報収集が苦手な人が、手軽に利用できるような制度があれば、貴重な人材を発掘することができるのではないでしょうか。

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【追記  コンサル・西川からのコメント】

 匿名先生のこのご意見に追加してコメントします。

 ベテリナリオ は匿名先生のご提案のように、猫の手でも借りたいほどの多忙さから労働時間や時給などの改善に取り組む動物病院が増えてくれば、通える範囲で時短勤務で働きたいと希望する女性獣医師とのマッチングは可能だとの感触を持っています。


 病院側の改善への取り組みと今は主婦や他業界で働く「潜在的女性獣医師」の掘り起こしが進むことで、獣医師の人材不足の解決に寄与できるものと考えます。

 

メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。