勤務獣医師にも気づいて欲しい、オーナー経営病院の魅力
4.勤務獣医師にも気づいて欲しい、オーナー経営病院の魅力
1つは、企業病院。もう1つは、院長個人が所有・経営しているオーナー病院です。
1.オーナー経営病院の魅力
企業病院に比べて、オーナー経営の魅力とはどこにあるのでしょうか。
1つ目は、院長が病院の譲渡を含む、すべての決定権を持っていることです。
2つ目は、診療方針や報酬、働き方・休みも院長が決められることにあります。
また、億越え病院を承継開業した新院長の中には、「勤務医からいきなり多くの勤務医を抱える大規模病院の院長になったことで、自分がガムシャラに頑張るよりもいかに勤務医が働きやすい環境を作るかが院長としての自分の役割であると気づきました。お陰様で働き方は勤務医時代とは一変して、休みを取るようにして、40歳を超えてスキーも始めてしまいました」と仰る先生もおられます。
※承継開業された新院長にコンサル西川がインタビューした動画がYouTubeにあります。「動物病院院長にインタビュー 」をご参照下さい。
2.企業病院の増加が与える影響
勤務医にとって、この企業病院が増えていくことにはどんな意味があるのでしょうか。
企業病院は、給与も高く、労働時間もきちんと決められていて働きやすいというイメージを持たれていると思います。
実態もイメージ通りで、ワークライフバランスを重視したい獣医師には企業病院も就職、転職や復職の選択の1つにはなると考えられます。
動物病院業界にとって言えば、若い開業獣医師を育てて来たのは、やはり個人オーナー経営の動物病院ですから、企業病院の台頭は、インタビューした開業院長が指摘するように、「獣医師のサラリーマン化」を引き起こしてしまうものと考えられます。
外資系企業病院や金融ファンドが買収した病院は、経営権は買収先の企業や投資家が握ることとなり、「院長」という肩書きは同じであっても、決定権を持たない「雇われ院長、サラリーマン院長」になります。
3.M&A買収とはまるで異なる事業譲渡としての「事業承継」
メディカルプラザはこのM&A買収とはまるで異なる事業譲渡として「事業承継」という言葉を使用しています。事業承継とは、オーナー院長が若い獣医師へと経営権を譲ることであり、動物病院業界においては、オーナー経営病院を存続させていくことであることから、現在世界的流れになりつつある持続可能性、SDGsにも即したものだと考えています。この機会に、事業承継とM&Aとは全く異なるものであることを認識して頂ければ有り難いです。
人材紹介 ベテリナリオが目指すのは、「STOP短期離職」です。
これは求人病院と求職獣医師とのミスマッチや病院内での人間関係に原因があるものと分析しています。
そこでこのミスマッチを起こさないために、双方がマイナスも含めた情報を出し合うことが大事だと考えています。ワークライフバランスを重視したい獣医師(特に女性獣医師)には、転職、復職を含めて、その意向に沿う転職先病院を紹介することを目指しています。
※ ベテリナリオの転職サービスの考え方は、当サイト内の「ABOUT US」をご参照下さい。
4.一般企業では「オーナー経営(ファミリービジネス)」はどう捉えられているのか?
これから高齢犬の減少が本格的に始まると、この動物病院での二極化が決定的になるものと予想しています。その時期は、2023年にやってきます。
小動物臨床の動物病院業界にとっては、初めての「低成長時代」がやってくることになります。つまりは、これまでにこの低成長時代を経験している院長、勤務医はいないということです。
ゆえに、この低成長時代(一般企業では不況と呼ばれる)を乗り切るためにも、経営に関する情報や知識は重要であると考えて、メディカルプラザではJBVP日本臨床獣医学フォーラムや獣医科大学などでの経営講座の実施、院長向けに経営情報誌を発行して来ました。
そしてこの経営に関する情報は、転職しようとする獣医師にとってもこれから重要になってくるものだと考えて、人材紹介 ベテリナリオのサイトを通じて情報発信していくことにしました。
なぜ他業界の一般企業の話をするのかと言えば、日本経済で起きていることは飼い主の経済事情に直結しますので、獣医学の知識も大事ですが、こうした経営・経済の知識も持ち合わせていくことが大事になって来ていると考えて記事にすることにしました。
ここでは、一般企業ではオーナー経営会社がどのように捉えられているのかをテーマに記事にしています。
経済誌などでは、「オーナー(同族)経営会社はパパママ経営で、後継はボンクラ息子」として、株式公開企業などと比較してマイナスイメージで捉えられています。つまりは、就職や転職先としてまず最初に選択肢から外すべき会社ということです。
しかし、株式公開企業は1990年のバブル崩壊以降の「失われた30年」を抜け出せずに、ずっと低成長、マイナス成長が続いています。そのために最近では、オーナー経営企業、ファミリービジネスにスポットライトが当たるようになって来ました。
オーナー企業の代表例を挙げると、トヨタ自動車、イオン、セブン&アイホールディングス、ブリヂストン、そして星野リゾートなどがあります。いずれも日本経済を牽引している企業ばかりです。
このオーナー企業にメディカルプラザ編集部が関心を持つきっかけとなったのが、2020年10月に行われた、星野リゾート・星野佳路代表の講演(主催・ヒューマンネットワーク株式会社)でした。新型コロナ対策による緊急事態宣言(2020年4月)で観光ホテル業界は壊滅的なダメージを受けている中での講演でした。
星野リゾートはどのような対策をとったのかに関心が集まる中で、星野代表は「現金と人材を守るために、CS(顧客満足度)を犠牲にした」との発言をしました。
なぜでしょうか。
この決断は一般企業のサラリーマン社長には到底できない経営判断だったからです。
このコロナ禍で大多数の大企業が対策として実施しているのは、早期退職者募集や新卒採用抑制といったリストラですから、星野代表のように、企業の根幹の経営方針を捨てるといった、思い切った決断はできません。
「危機の時こそオーナー企業の強さが発揮されることになる」ことに気付かされたのです。
日本はヒトも企業も長寿大国ですが、この長寿企業の大半が小規模経営のオーナー企業であるという点です。なかには、1000年を超える歴史を持つ企業もあります。因みにこの小動物臨床の動物病院業界はまだ100年にも達していません)。
「100年以上続く企業の世界ランキング」日経BPコンサルティング 周年事業ラボの調査・2020年によれば、日本はダントツで長寿企業が多いことが分かります。
1位 日本 3万3076社
2位 米国 1万9497社
3位 スウェーデン 1万3997社
4位 ドイツ 4947社
5位 英国 1861社
6位 イタリア 935社
これは「家族だからこそ何十世代にも渡って経営のバトンタッチ、事業承継が成し得た」とも言えます。今回のコロナ禍といった不況がやってくると、リスクを取って経営判断できるオーナー経営者と雇われサラリーマン経営者との違いが大きく浮き彫りになって来ます。
動物病院業界の危機はこれからやって来ます。
高齢犬の減少はすでに始まっていますが、2023年には誰もが高齢犬の減少を実感するようになると予想しています。
その時、オーナー院長とサラリーマン院長との歴然とした違いが浮き彫りになってくることになります。
※なお、100年以上続く企業の世界ランキング(日経BPコンサルティング)については、こちらをご参照下さい。
メディカルプラザの人材紹介業 ベテリナリオは、これからの動物病院の二極化に対応できる繁盛病院を転職したい勤務医にご紹介していくとともに、女性勤務医の長期雇用についても院長への啓蒙を行い、現場を離れている女性勤務医の復帰、復職などについても積極的に取り組んでいかなければならないことと考えております。