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【元院長の証言 1】なぜ企業病院ではなく、個人獣医師に病院を譲渡したのか?

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8.【元院長の証言 1】なぜ企業病院ではなく、個人獣医師に病院を譲渡したのか?

※この記事は、メディカルプラザが2021年に全国のほぼすべての院長向けに発行した経営情報誌から、就職・転職、そして復職を目指す獣医師(勤務医)に重要な情報をピックアップして加筆・リライトしたものです。
 毎日、来院する患者さんの診療、手術などで忙しくされている勤務医にはなかなか伝わってはいない情報かもしれませんが、米企業病院による日本の動物病院買収が進んで来ています。そのすべてがこの業界で売上が上位10%に入る億越えの繁盛病院です。
 つまりは、病院名や病院の外観、院長、勤務医、スタッフは全く変わっていないのに、経営権が個人の院長から米企業病院や金融ファンドに変わった動物病院が増えているのです。

 2019年に始まった米企業病院と金融ファンドによるM&A・買収は、イオンペットを含めた3つの企業病院で業界売上ベスト3を占めてしまうほどに急成長して、このわずか3年余りで動物病院の業界地図を塗り替えてしまいました。
 なぜこの企業病院に病院を譲渡する動物病院が多くあるのかという点ですが、企業病院や金融ファンドは資金力があるので、買収金額が億単位であったとしても「現金」で支払うことができるかからです。

 院長にすれば、老後資金・退職金をしっかりと現金で受け取ることができるわけですから、買う側、売る側の双方にとって大きなメリットがあるのです。よって、この買収に勤務医の意思が反映されることはないと言えるでしょう。

 しかし一方では、企業病院からのM&Aオファーがあることを知りながら、事業承継で病院を譲渡した元院長がおられます。
 そこで最近、事業承継でリタイアされた元院長に、なぜ企業病院ではなく個人獣医師に譲渡したのか、その理由を伺いました。
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【証言者1/ 匿名院長】その地域でのブランド病院にまで成長された後、40代で若い獣医師に事業承継して引退した

Q:先生の病院規模ならば、譲渡先に企業病院という選択肢もあったかもしれませんが、先生は個人獣医師を承継者として選ばれました。

元院長:企業病院に譲るという考えは全くなかったです。


Q: 個人獣医師に譲られた理由は何だったのでしょうか。

元院長:私が企業病院をあまり知らなかったこともありますが、理由の第1は、私自身も勤務医からオーナー院長になった経緯があるからです。同じ獣医師である若い勤務医に譲るとしか考えていませんでした。

 私は完全リタイアするつもりでしたから、「院長としてガンガン仕事をやってくれる人」を承継者の条件にしていました。

 この点からしても企業病院には譲らなくて良かったと今では思っています。

 

 

Q:個人の獣医師だと、先生の病院の診療方針やスタイルが受け継がれていくと考えてのことだったのでしょうか。

元院長:そういうわけではありませんでした。
「院長は自分が好きなようにやるべき」というのが私の考えですから、新院長にも「私がやってきたことは全て壊して、新しい病院にして下さい」と言っています。


Q; 個人獣医師に譲る上で、どんな点を重視して継承者を選ばれたのでしょうか。

元院長:この動物病院を引き継いでやれるかどうかの経営者としての実力です。言い換えれば、根性・精神力があるか否かです。

 私は院長には何が起きてもくじけない精神力が必要であると思ってきましたので、この点は念を押して確かめました。その上でOKしてくれたので、この承継が決まりました。

 動物病院は一旦開業したら、私の辞めたいという個人的理由から廃院にはできないものです。

 私のこれまでの仕事は創業した病院のブランド化を確立させたこと。そして西川さんの紹介で根性がある若い獣医師がやってきたから、個人獣医師に譲ることを決めて、結果的に自分の思い通りになって良かったと思っています。

 

 

Q:事業承継の場合、承継開業した若い院長は自分がリタイアする時にもまたこの事業承継したいと考えておられます。どんどんバトンタッチされていくことで先生の創業した病院は続いていくことになります。

 

元院長:次世代のことまでは意識していませんでした。
 私がこの事業承継を選択してリタイアすることによって、結果的にそうなっていくわけですね。

Q:そうです。これもこの事業承継の大きな特徴点であると考えています。

 メディカルプラザの人材紹介業 ベテリナリオは、これからの動物病院の二極化に対応できる繁盛病院を転職したい勤務医にご紹介していくとともに、女性勤務医の長期雇用についても院長への啓蒙を行い、現場を離れている女性勤務医の復帰、復職などについても積極的に取り組んでいかなければならないことと考えております。