【勤務医必読 知っているか知らないかで将来に明暗 2】改正動愛法施行によるダメージはいつからやってくるのか?
13.【勤務医必読 知っているか知らないかで将来に明暗 2】改正動愛法施行によるダメージはいつからやってくるのか?
悪徳ブリーダーの撲滅などを目的として、動物愛護管理法の改正が定期的に環境省によって進められて来ました。
しかし、2003年の動愛法改正によって起きたことは、悪徳ブリーダーよりも適法ブリーダーやホビーブリーダーが大量に事業を止めてしまうという結果になり、犬の少子化の引き金になりました。
そして2019年の法改正では、さらなる制約が追加されました。
これは「改悪」としか言いようがない法改正で、これからペット業界全体に大ダメージを及ぼして来ます。
このダメージがいつ頃からやってくるのか、その予想について、再び、犬猫適正飼養推進協議会・石山恒会長に伺いました。
●ブリーダーの減少数は各自治体担当者の指導次第で決まる
そこで施行後に犬の頭数がどうなっていくのか、ご見解を伺いたいと思います。
石山会長:この改正法施行で犬の頭数減少がどうなっていくのかについては、「分からない」と答えるしかありません。
それは、規制強化された内容が多く、それぞれの規制の影響がどのように出てくるのかが分からないためです。
今回の改正法施行でブリーダーへの影響が大きい順に言えば、①従業員1人あたりの飼育頭数制限強化、②飼養施設改善(犬種のサイズに合わせたケージサイズの拡張(或は交換)またケージサイズの拡張による犬舎の増改築、遊び場の設置)、③繁殖回数・年齢の制限の強化です。
加えて、④1年に一度の獣医師による健康診断の実施があります。
この健康診断については、多数飼っているブリーダーは動物病院には連れてはいけないので、獣医師さんに来てもらわなければなりませんが、全体の64%の診療所が獣医師一人で診療していますので、診療所を閉めて健康診断を行わなければいけません。しかも、環境省は健診の参考として「エックス線を撮る」と書いているので、各自治体の担当者は「エックス線検査をしなければならない」と捉えてしまう可能性があります。
この健診義務化だけでも、物理的にも経済的にも「できない」と判断するブリーダーが出て来ると思います。
犬の頭数減少がどうなるのかについては、①から④までの項目について各自治体がどこまで熱心に規制実施をやるのか、また、ブリーダーが飼養施設の大きさ基準を満たすために増改築をどれくらいのスピードでやるのか、犬猫の値段が今後どうなっていくのか、これらの要因が複雑に影響するために、何年後には何頭にまで減少するといった予測をすることはできません。
つまりは、「この改正法施行で犬の頭数が減っていくことは確実ではあるが、その減少のスピードについては分からない」としか言えません。
西川:2020年はコロナ禍のステイホームの影響があって、JKCの犬籍登録数が増加に転じました。しかしこの改正動愛法の施行で2021年に再び減少に転じるかどうかは今の段階では分かりませんが、一旦減少に転ずればそのまま減少し続けていくことになるのでしょうか。
犬猫適正飼養推進協議会とペットパーク流通協会は、2020年7月10日の環境省の数値基準案が導入された場合の業界への影響を測るため、ブリーダーに緊急調査を実施。その結果として「犬のブリーダーの32.3%が廃業を視野に入れており、13万頭以上の犬猫が行き場を失う」ことが判り、環境省に対して「この犬猫たちをどうするのか」と現場の声を伝えてきました。
そのため、環境省は従業員の飼育頭数制限に「激変緩和措置」をとり、2022年まではこれまで通り、2023年以降に5頭ずつ減らして、最終的に犬15頭、猫25匹にすることになりました。
これによって、「ブリーダー減少については2021年と2022年については大きな問題とはならない」と言えるでしょうが、それ以降は大幅な減少に至ると思います。
また、各自治体の行政官がどこまで厳しくブリーダーの指導をしていくのかが犬の頭数減少に大きく影響するのですが、今、保健所は新型コロナ対応に追われていますので、この新型コロナが収束した後にこの改正法施行の影響は出てくることになります。
●2025年の第5次法改正では、何が議論されるのか?
石山:ブリーダーの数が減れば、それはペットショップやペットフードメーカー、そして獣医師にもダメージは必ず及んで行きます。
そこでこの動物愛護管理法改正が今後どのような方向になるのかについてですが、ヨーロッパでは11カ国でペットショップでの犬猫販売が禁止されました。
チェコやハンガリーの劣悪な環境下で繁殖された犬猫がいい加減な血統書やワクチン証明を付けて他国のペットショップで販売されているからです。
また、米国でもニューヨーク市ほかやカリフォルニア州で禁止しました。それぞれの国でペットショップでの販売禁止理由にはそれぞれの国の犬猫供給形態の違いがあり、ヨーロッパやアメリカの問題が、日本にそのまま適用されるべきかというとそれは違うと思います。
2019年の法改正でもそうでしたが、西欧で起っていることをそのまま日本に適用する前になぜそういうことが起こったのかというルートコーズを調べる必要があり、西欧の法制度、宗教的動物観、犬と人間の関係の歴史、環境、社会通念等、色々あります。
その端的な例が安楽殺で、欧米では動物の5つの苦しみからの解放という原則(5つの自由)に則り合法化されています。
日本の動物愛護管理法は、理念的には5つの自由に則っていますが、合法化されていません。
欧米から見ると、日本の法律は治療法がなく苦しんでいる動物をそのまま生かし続けるということこそ、5つの自由に反するという考えです。
またもし獣医師が5つの自由を無視し、動物を苦しめることを継続したとしたら、場合によっては訴訟事件になり、獣医師の免許を剥奪されることもあり得ます。
西川:販売禁止ですか。
石山:はい、禁止です。イギリス、フランス、クロアチア、スウェーデンなどの国ですが、この波はいずれは日本にやってきて、2025年に予定されている第5次法改正では「ペットショップでの犬猫の販売禁止」が議論されるのではないかと見られています。
※犬猫適正飼養推進協議会がこの改正動愛法の数値規制が導入された場合にどんなことが起きるのかをまとめた意見は、こちらをご参照下さい。
→ 改正動物愛護法の数値規制に関する意見 https://dcwmgc.jp/news/2020/10/opinion_1/
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