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勤務医に知ってほしい、ここ3年間の動物病院業界の大変化

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2、勤務医に知ってほしい、ここ3年間の動物病院業界の大変化

※この記事は、メディカルプラザが2021年に全国のほぼすべての院長向けに発行した経営情報誌から、就職・転職、そして復職を目指す獣医師(勤務医)に重要な情報をピックアップして加筆・リライトしたものです。

 毎日多忙な勤務を続けられている勤務医や子育て等で病院から離れられている獣医師、特に女性獣医師にとっては、動物病院業界全体で今、何が起きているのかを知ることはなかなかできないと思います。そこで2019年からの3年間で起きている大変化について知って頂きたいと思い、記事としてまとめました。
 この3年間の大変化を図説化していますので、下記をご参照ください。
獣医師 転職 この3年間の動物病院業界全体の変化 ベテリナリオ
この3年間の動物病院業界全体の変化

1.「犬の少子化・頭数減少」について

 この動物病院業界に起きた、大きな変化と言えば、2003年から始まった「犬の少子化・頭数減少」です。

 現在の20代、30代の勤務医は、獣医科大学生の時に「犬の頭数減少で小動物臨床はこれから厳しくなる」と大学の先生などから聞かされていた方が大半ではないかと思います。しかし、いざ動物病院に入ってみると、「忙し過ぎて厳しい」と感じているのではないでしょうか。
 患者は増えて、毎日、診療・手術で大変だ。動物病院の経営は厳しくなるどころか、むしろ繁盛していると感じておられる勤務医が多いのではないでしょうか。

 では、犬の少子化、頭数減少が始まっているのに、なぜ勤めている動物病院は繁盛しているのでしょうか。その理由にお気づきでしょうか?

 

 それは、高齢犬が増えているからです。

 

 高齢化はヒトも同じですが、医療費がかかるようになります。予防だけではなく、検査や手術が増えていることで、勤務医は毎日忙しく、動物病院は売上をどんどん伸ばして来ました。

 ですが、この状況に変化がやってくるのは、2023年頃です。

 高齢犬の減少はすでに始まっていますが、その減少が動物病院の経営にダメージを及ぼして「これまでとは違うな」と誰もが感じるようになるのが2023年頃であると予想しています。

 さて、2019年からの3年間にこの動物病院業界は変化の時を迎えています。その変化とは、犬の少子化とは別の要因によるものです。

 この変化の内容をこの人材紹介 ベテリナリオのサイトに掲載するのは、特に若い獣医師にこそ知って頂きたい情報だからです。

 現在院長を務めている50代以降の世代よりも、20代、30代の若い獣医師により強く影響してくる変化であるからです。

 では、2019年からどんな変化がこの業界で始まっているのかを見ていきます。


2.2019年の変化 → 外資企業病院と投資ファンドによるM&A(動物病院買収)の本格化

 米国には、VCAとバンフィールド・ペット・ホスピタルという、2つの巨大企業病院があります。

 米VCAは、親会社がM’sやスニッカーズ、ペットフードではカルカンやロイヤルカナンを販売する大手食品会社のマース インコーポレイテッドで、買収で動物病院を増やして300件以上の動物病院を持つ巨大グループです。

 バンフィールド・ペット・ホスピタルも、親会社は大手食品会社のマース インコーポレイテッドで、ペットショップと併設する企業動物病院です。

 2019年、その1つの米VCAが日本法人を設立して、売上の億越え病院の買収に乗り出して来ました。また、この年は金融ファンド・WOLVES Handがその資金力をバックに本格的に買収に乗り出して来た年でもあります。
 メディカルプラザの情報サイト「Succession」では、常にこの情報は読まれている記事のトップ1にランクインしていますので、すでにご存知の勤務医もおられると思います。
※米企業病院の日本参入については、コンサル西川がYouTube「米国VCAはなぜこの時期に日本への進出を決めたのか?」にて動画解説していますので、そちらをご参照下さい。

獣医師 転職 この3年間の動物病院業界全体の変化 ベテリナリオ
米国VCAについて

 この米国企業病院と金融ファンドがこの動物病院業界にどんな変化をもたらせたのでしょうか。

 それは、わずか3年間で動物病院の業界地図を塗り替えてしまったことです。

 

 企業病院はイオンペットが知れ渡っていますが、イオンペットと米企業病院VCA Japan、金融ファンド・WOLVES Handが売上で業界ベスト3を占めるほどに企業病院が台頭して来ています。多くの院長、勤務医、飼い主が知らないところで、個人オーナー病院が企業病院の傘下に入っているのです。

 この企業病院の台頭は、院長に対しては、自分の病院を次世代に引き継ぐとして、個人獣医師に譲るか、これらの企業病院に譲るかといった選択を迫り、勤務医に対しては、個人病院に勤めるか、台頭している企業病院に勤めるかの選択肢ができることになります。
 転職を目指している獣医師にとって、この変化は「朗報」と言えるのでしょうか。

 メディカルプラザの開業支援コンサルの経験から言えることは、「企業病院では数多くの症例をこなしてスキルやノウハウを伸ばすことはできない」という点です。

 

 メディカルプラザがこれまでに承継開業をサポートした新院長は200人を超えています。売上が億越えの病院承継者はそのうちの50人余りですが、企業病院出身者は1人もいません。 また、200人の中には企業病院出身者もいますが、20代には個人オーナー病院で経験を積んでいるという事実があります。

 人材紹介 ベテリナリオは勤務医に3つの転職希望実現をコミットしていますが、どの方向性を目指すのかは、自分の獣医師としての一生を決めることになることもあるので、しっかりと将来、老後のことまで見据えて考えて頂きたいと思います。


3.2020年の変化 →コロナ禍での新規開業ラッシュ

 2020年の変化としては、「コロナ禍でありながら新規開業は減るどころか、かつてないほどの開業ラッシュであった」という点です。
 詳しくは、このサイト内の「新設開業件数調査から読み取れた、勤務医の開業意識」にありますので、ご参照ください。

 メディカルプラザはコンサルタント業として、当初は新規開業のサポートを行い、300人以上の勤務医を開業医にして来ました。
 しかし、犬の頭数減少が2003年から始まったことをJKCジャパンケネルクラブの犬籍登録数のデータから知ったことで、「これから新規開業病院の経営は厳しくなると、サポートして開業した勤務医が大変な目に遭う」と直感したことで、新規開業サポートを一切中止して、今ある動物病院を若い勤務医へと引き継がせる「事業承継」による開業サポートへと切り替えて来ました。
 そのため、新規開業については常に調査分析を行い、開業希望の勤務医にはこの承継開業スタートの優位性をアピールして来ました。詳しくは、メディカルプラザのホームページをご参照下さい。

 これまでのメディカルプラザの独自調査により、新規開業が1都3県、愛知、大阪、兵庫の大都市圏に集中していることが分かりました。特に多いのは東京都と神奈川県で、2014年からの7年間で、東京都では530件、神奈川県では560件と新しく動物病院が誕生しています。
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今後の動物病院業界の過当競争とは

 この新規開業病院が増え続けていることで、何が起きてくるのでしょうか。

 

 それは、これから過当競争が激しくなって、経営難に陥る動物病院や経営破たんする動物病院が出てくることを意味しています。

 すでにこんな事例があります。

 

 横浜で新規開業した動物病院院長から「経営不振からこのまま続けていくことが出来ない」との相談を受け、事業承継による再チャレンジが可能ではないかと提案して、その後、事業承継によって病院を引き継ぎ、元の病院は廃業して地方都市の新院長としてリスタートしたという事例です。

また、経営不振からの倒産という動物病院も出始めていると聞きます。

※動物病院の倒産の情報がなぜ伝わってこないのかについては、こちらの記事をご参照下さい。


 新規開業ラッシュがこのままの高水準で続いていくことは、勤務医にとって「良い開業スタート」になるとは限りません。その理由は、過当競争がますます激しくなっていくことと、新規開業での成功法則が変わってしまったことにあります。

 今までは開業から3年でいかに新しい患者を獲得するかが新規開業での成功のカギを握っていましたが、犬の頭数減少に加えて過当競争が激しさを増していることで、この新規開業での成功法則が「他の動物病院からの転院数をいかに増やすのか」に変わってしまいました。
 高齢化で検査や手術を要する犬が増えているので、その地域のブランド病院に患者が集中する傾向が強くなっていることで、新規での開業スタートは以前より増してリスクが高くなっていると言わざるを得ません。
 詳しくは、コンサル西川がYouTube「新規開業後の怖い話 」で動画解説していますので、そちらをご参照下さい。

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新規開業後の怖い話

4.2021年の変化 →改正動愛法施行でブリーダーへの規制強化始まる

 2021年の変化ですが、これは若い勤務医・院長ほど、そのダメージを大きく受けてしまう出来事です。
 これは、2021年6月に施行された動物愛護管理法の改正によるものです。

 この動愛法は悪徳ブリーダーを排除するため、これまで何度も法改正が進められて来ました。これまでにこの法改正で大きなダメージを受けてきたのは、ブリーダー業界でした。専門業者だけではなく、家庭内で犬の繁殖をしていたホビーブリーダーが法改正に伴う規制がクリアできないと判断し、その数は激減してしまいました。

このブリーダー激減が獣医師業界、動物病院にどう影響しているのかと思われるかもしれませんが、2003年に始まる犬の少子化の原因を作ったのは、2003年の動愛法の改正でした(JKCジャパンケネルクラブへの取材で判明)。


 すでに3回ほど法改正は行われ、2021年6月に第4回目の改正法が施行されました。今回の改正法施行ではより厳しく制限が設けられていて、法運用では刑事告発の手順や自治体が登録取消処分まで行えるようになっているため、ブリーダーの更なる激減が進んでいき、ペット業界全体が壊滅状態に追い込まれるくらいの最悪の状況すら予想されています。

「この法改正は今日、明日で問題になるものではないから、年配世代にはさほど問題にならないかもしれませんが、若い獣医師で借金をして開業している獣医師さんには気の毒で仕方ありません」(犬猫適正飼養推進協議会 石山恒会長)


 石山会長の言葉にあるように、今回の法改正施行の影響が出てくるのはこれからであって、20代、30代の獣医師ほど、大きくダメージを受けることになります。
 2003年の法改正で始まった犬の少子化の悪影響は、高齢犬の増加がカバーして動物病院の経営は今なお順調な成長方向にありますが、高齢犬が減少していくことで起きてくる変化は、この動物病院業界が迎えることとなる「初めての低成長時代の到来」と言えます。

5.まとめ

メディカルプラザの人材紹介 ベテリナリオでは、これから起こり得る変化をこのサイトでの情報としていち早く若い獣医師に届けたいと思っています。この情報を転職先病院の決定に活かして頂きたいと考えるからです。

 この企画で述べたこの3つの変化は始まったばかりです。

 

※犬猫適正飼養推進協議会がこの改正動愛法の数値規制が導入された場合にどんなことが起きるのかをまとめた意見は、「改正動物愛護法の数値規制に関する意見」をご参照下さい。

 

メディカルプラザの人材紹介業 ベテリナリオは、これからの動物病院の二極化に対応できる繁盛病院を転職したい勤務医にご紹介していくとともに、女性勤務医の長期雇用についても院長への啓蒙を行い、現場を離れている女性勤務医の復帰、復職などについても積極的に取り組んでいかなければならないことと考えております。