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【元院長と新院長の証言 6】開業の動機 女性獣医師としてなぜ開業に踏み切ったのか?

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16.【元院長と新院長の証言 6】開業の動機 女性獣医師としてなぜ開業に踏み切ったのか?

※この記事は、メディカルプラザが2021年に全国のほぼすべての院長向けに発行した経営情報誌から、就職・転職、そして復職を目指す獣医師(勤務医)に重要な情報をピックアップして加筆・リライトしたものです。


 現在では獣医科大学生の半数以上が女性であり、小動物臨床に進む女性獣医師も増えて来ていますが、30歳を境にして、女性獣医師は結婚、出産、そして子育てのために臨床現場を離れて家庭に入ってしまいます。
 そのため、長期勤務している女性獣医師や復職してくる女性獣医師は非常に少なく、女性開業医となると稀な存在になってしまいます。

 日本では女性の社会進出が非常に遅れていると海外から指摘されることがありますが、一方では、一般企業も、この動物病院業界も後継者不足や人材不足に陥っています。そこで「女性の活躍」に目が向かないのは残念なことです。

 動物病院業界について言えば、人材不足の対処として、これからの女性獣医師の活用は不可欠なものになっていくものと人材紹介 ベテリナリオは考えます。

 

 そのため、女性獣医師が長期働ける環境を作っていくこと、また、復職できるようにするための制度や仕組みを作っていくことなどの院長への啓蒙活動が大事になってくるものとベテリナリオは考えています。

 

 そこで、女性獣医師として開業された渡邉元院長に、なぜこの筑西市で開業しようと思われたのか、その動機などを伺いました。

 

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 【証言者 6/ 茨城県筑西市 玉戸ペットクリニック 渡邉容子元院長・河辺繁樹新院長】

●「自分のスタイルでやりたい」と、10年間のブランクを乗り越えて開業

 

西川:開業までの経緯についてお聞かせください。

 

渡邉:大学を卒業した1980年は、まだ男女雇用機会均等法もなく、女性は獣医師資格を持っていたとしても、就職の門戸は閉ざされた状態でした。学卒でいきなり「自分で生きていくしかない」と痛感させられました。

 その上、結婚が早かったので、ますます社会からは遠ざかっていきます。

 その後、メーカー勤務の夫の転勤で、米ニューヨークに移住します。

 そこで自分のお産で病院と関わりました。看護師を介することなく、医師と一対一で向き合い、分娩室など無くて自分の個室でお産をします。

 しかもお産を担当する医師も自分で選択することができました。「個人を徹底して大切にする」米国医療の日本との違いを肌で感じて帰国します。

 

 

西川:医療における日米の違いを肌で感じられたことが後に獣医療でも活かされたのではないかと思います。


渡邉:帰国後も子育てでますます仕事ができない環境になっていましたが、その反面、いつかは仕事をやりたい思いはどんどん強くなっていきました。
 この筑西市は夫の実家があるところです。当時は牛を飼っていて、私は「ここで動物病院を開業したい」と義理の母に話してみました。そこから私の開業は始まります。
 その地方の土地柄なのか、義理の母の相談に乗ってくれた獣医師の先生が私の勤められる動物病院を紹介してくれました。卒後10年でようやく獣医師の世界に戻ってくることができました。
 院長の教えは、自分でどんどんやりなさいという感じで、手取り足取りで教えてくることはありませんでした。
 4年間、代診をして、「どうしようか」と悩んだ末、清水の舞台から飛び降りる覚悟で開業を決めました。やはり、自分のスタイルでやりたいと思ったからです。

西川:河辺先生がなぜ開業しようと思われたのか、そのきっかけをお聞かせください。

 


河辺:その理由は、3つあります。

 1つ目は、動物病院は院長がその病院の顔になっている世界です。仮に院長を凌ぐ技術を身に付けることができたとしても、その動物病院に居る限りは院長と同じ土俵に上がり、同じ景色を見ることはありません。それでは育ててくれた院長に自身の成長という恩返しができないのではないかと思ったのが1つです。

 また2つ目は、勤務医の雇用は院長との個人的関係で成り立っています。その院長が年上である以上、いつかは代替わりする日がやって来ます。その時に自分はどうなるのだろうかと考えたことでした。

 そして3つ目は、60歳までこのまま勤務医として居続けた場合に自分がどうなっているのかが想像できなかったからです。

 

 

西川:40歳が近づいてくると、50代、60代が見通せるようになって、先行き不安が出て来ます。そこで開業に踏み切る勤務医が非常に多いのです。

 

 

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●事業承継がこの業界全体に与えるメリットとは何か?

西川:オーナーからオーナーへの世代交代が進みましたが、やってみた後の感想をお聞かせください。


渡邉:やはり承継の良い点は、1つのパイの奪い合いにはならないことです。

河辺:業界全体で考えると、犬の頭数が減っているのに新規開業で病院の数が増え続けていることで、行き着く先は「価格競争」しかありません。

 

 

渡邉:新規開業が増えると、そのパイを奪ってこないと経営できなくなってしまいます。

西川:渡邉先生が仰る通り、新規開業の成功法則は全く変わってしまいました。

 以前は新患がどれだけ来院するかで勝負が決まりましたが、今では他の病院からいかにして患者を獲得してくるかになっています。

 その点で新規から立ち上げて、この地域で玉戸ペットクリニックまで成長させることは至難の業と言えます。

 


渡邉:動物病院は社会的資産ですから、次の世代にこの社会的資産を引き継ぐ事業承継は、最近のSDGsで持続可能性が求められる時代にも合っているとも思います。

 

 


メディカルプラザの人材紹介業 ベテリナリオは、これからの動物病院の二極化に対応できる繁盛病院を転職したい勤務医にご紹介していくとともに、女性勤務医の長期雇用についても院長への啓蒙を行い、現場を離れている女性勤務医の復帰、復職などについても積極的に取り組んでいかなければならないことと考えております。