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ある現職勤務医の勤務実態~シフトと給与~

女性獣医師,復職,動物病院,生涯年収,時給,勤務実態

女性獣医師の本音トーク その13 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

現職勤務医のリアルな勤務条件 〜 獣医師は労働時間が長いので、時給換算すれば低給与になる ~ <前編>

 匿名・女性勤務医

 私は、個人病院、いわゆる「かかりつけ」といわれる小規模動物病院に勤務している。今年で臨床7年目となる私の、リアルな勤務条件を紹介したいと思う。
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① 完全週休2日、シフト制

 これは文字通り「完全週休2日」だ。

 

 たとえばお盆や年末年始で病院自体が休みでも、そこで休めばその分はすべて週休2日のうちに数えられる。超えた分は有給消化だ。そしてお盆などに病院自体は閉まっていても、入院の世話、急患の診療、普段は出来ない院内の整備など、意外と仕事は山積みだ。

 それらをやる人間が一人もいないなどというシフトの組み方は許されないため、必然的に休みを何人かで分け合うことになる。

 

 もちろん、セミナー参加での休みも週休2日のうちに数えられる。

 

② 有給について

 有給はある。

 ①で書いた通り、盆暮れの休診期間のために使ったり、冠婚葬祭などの際に使用したりする。基本的には自己申告制なので、いつどれだけ使おうが規定上は本人の自由である。

 

 しかし当院はあくまでもシフト制。現在、絶賛人手不足中の当院では、全体の人数的に1日の休みは獣医師看護師問わず1人までが限度。つまり私が長く休めば休むほど、その期間に休めない人間が出てくるのだ。そんな状況ではなかなか長くは休めない。

 ただ幸いなことに当院はスタッフ間の人間関係が良好なため、閑散期(例年2~3月)にはお互い痛み分けとして連勤をこなし、それぞれが可能な限り連休をとれるように調節しあう。これまでにも最大で5連休まで取ることができた。

 

 これは年に1回だけめぐってくるご褒美期間なので、基本的には1カ月は優に休める有給が常に残っている状態だ。

 

③ 年収530万円(年2回の賞与含む)、社会保険完備

 おそらく「社会保険完備」などという病院が増えてきたのはここ10~15年程度の話ではないだろうか。

 近隣の動物病院でもいまだに導入していないところはある。かくいう当病院も、私が入職するつい数年前まで社会保険には加入していなかったそうだ。

 

 

 

 【追記  コンサル・西川からの匿名先生への質問】

 

 コンサル西川:年収530万円とありますが、時給で計算したことはありますか。

 

 匿名女性勤務医:どれくらいなのかは計算したことはありませんでした。

 

 コンサル西川:勤務時間について教えてください。

 

 匿名女性勤務医:勤務時間は平均10時間で、週休2日です。

 

 コンサル西川:となると、勤務日数は259日で、10時間ですから、年間2590時間です。年収530万円をこの時間計算すれば、2046円です。

 額面では530万円と貰っている様に思っていても動物病院は勤務時間が長いので、実際のところ、獣医師はあまり給与が高い職種とは言えません。

 

 この年収530万円という数字を、皆さんはどう思われるだろうか。


 30代の一般的な会社員の平均値と比べればそこまで悪くないのかもしれない。しかし、獣医師になるまでの過程を考えれば、あまりにも報われない数字ではないだろうか。


 現在、日本国内で、資格試験の受験のために6年制大学での課程修了を義務付けられている職種は全部で4つ。医師、歯科医師、獣医師、薬剤師である。


 そして、筆者の独断と偏見で言わせてもらうと、大学入学時の入試難易度は医学部≧獣医学部≧歯学部≧薬学部だ。


 しかし、生涯年収では、医師>歯科医師>>超えられない壁>>獣医師≧薬剤師だろう。さらに、国立の獣医学科に受かった人間というのは、いわゆる一流大学とよばれる大学にはたいてい合格できる学力を持っている。


 そのような大学を卒業した、高校時代の友人たちの現在の悠々自適ぶりをみると、私もあちらへ行く道があったのでは無いか、とふと空しくなることもある。


 獣医学科を諦めて、いわゆる一流大学の普通の学科に進学していた方が、彼らのように同じお給料でも9時~17時の仕事、そして当たり前に長期休暇が取れる仕事に就くことができたのではないか?と。

 

 

 【追記  コンサル・西川からの匿名先生への質問】

 

 コンサル西川:6年制大学の国家資格の生涯年収比較のところですが、獣医師は薬剤師よりも低いと言われています。

 

 匿名女性勤務医:獣医師は、開業医を含めると平均の生涯年収よりも高くなりますから、「獣医師≧薬剤師」としました。

 

 コンサル西川:確かに年収でみると、薬剤師よりも高いでしょうが、時給で計算すると、獣医師の開業医は勤務時間が長いので、獣医師は薬剤師よりも低いと言う人が多いのです。

 

 匿名女性獣医師:生涯年収でみれば獣医師は薬剤師よりも上だけれども、時給計算では下になる。ただヒトの医師、歯科医師は保険診療なので、獣医師と薬剤師との間には「超えられない壁」があります。

 また、獣医師はヒトの看護師よりも低い。

 

 コンサル西川:そうなんです。こういう実情はあまり獣医師には知られていません。

 

 

 【編集部・注】

 平均年収を分析するサイト「平均年収.JP」による国家資格者の年収の数値を参考までに記します。

  • 内科医      1200万円〜1500万円
  • 外科医      1159万円
  • 歯科医師     約1299万円
  • 獣医師      631万円
  • 女性獣医師    559万円
  • 薬剤師      590万円
■この記事には<後編>があります。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。