【特別対談】40代・50代の元女性獣医師のあなたへ
女性獣医師の本音トーク その27(女性院長から40代、50代の女性獣医師へのメッセージ)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
50歳を越えて臨床を始める女性獣医師が少ない理由を考える ~私は院長として「戻ってきてもいい」と考えています~
匿名女性院長×コンサルタント西川芳彦
その1番の理由は、親の介護
コンサル西川:女性獣医師で50歳を越えて小動物臨床に入って来られる方はあまりおられません。
子育てが終わった年代になってからでも臨床を始めることはできると思うのですが、これには女性特有の理由があるからなのでしょうか。
匿名女性院長:その理由として考えられるのは、1つには、前例があまりないこと。またもう1つは、もしかしたら更年期も理由として考えられるかもしれません。そして一番大きな理由は、この年代になると、自分の両親や夫の両親の介護が絡んでくるからではないでしょうか。
コンサル西川:両親の介護が1番の理由ですか。
匿名女性院長:そうです。私も父親の介護問題を抱えながら、院長の仕事を続けています。自分の病院近くに来てもらうか、私が実家に帰るか、どちらかしか選択肢がなくて、どうしようかと悩んでいる最中です。
コンサル西川:私の周りの人達は、自分でやるのは限界があるので、専門の介護施設に預けるのがほとんどです。
匿名女性院長:私もその選択肢は考えていますが、父親は元気で1人での生活が成り立っているので、今は要介護になった時に困らないようにと準備している段階です。
人生経験が活きてくるのは、40代、50代である
コンサル西川:私のこれまでのコンサルタント経験からしても、女性獣医師は40代、50代でも臨床に戻れると思うのですが、前例がないとの理由で、「戻らない、戻れない」と考えてしまう人が多いのは大変もったいないと思っています。
匿名女性院長:私は院長として、「40代、50代の女性獣医師が現場に戻って来られてもいい」と思っています。
ただ、女性獣医師の側にあきらめの気持ちがあるのだと思います、「今さら戻っても、出来ない」と思っている。
コンサル西川:そんなことはないと思うのですが。
匿名女性院長:私もないと思います。ただこれは、本人の意思次第なので。
手が動き、目が見えているうちは臨床現場に戻ることはできると思うのですが、これには女性側の意識の問題があると思っています。
コンサル西川:これから40代、50代で臨床に復帰する事例を増やしていくことができれば、女性の意識も変わるのかもしれません。
匿名女性院長:そうですね。
コンサル西川:一般企業や公務員に40代、50代になって戻るのは難しいでしょうが、臨床の場合は、実力さえつければ働けると思うのですが。
匿名女性院長:そうですね。獣医師ではなく、看護師のケースなんですが、私の病院では、結構、高齢の方を採用しています。1人は40歳からのスタートの方ですし、もう1人も、45歳からのスタートでした。
なぜこの年代の看護師を雇ったのかですが、飼い主さんと年齢層が合うからでしょうか。
この年代の看護師さんは連れて来られる飼い主さんとの会話が弾んでいました。「あっちが痛い」「私はこっちだ」とか、老眼の話だったりとか。若い看護師さんとの会話は弾まなくても、年齢が近い人同士での会話は非常に弾んでいる。
年齢が高い飼い主さんとのコミュニケーションが日常会話としてできるという点で大きなメリットがありますので、私の病院では、40歳以上の方でも積極的に採用するようにしています。40代、50代の獣医師・看護師だから雇わないと思ったことは一度もありません。
コンサル西川:私も今まで500人以上の開業支援をしてきまして、50歳以上になって開業される方はこれまでの社会経験がプラスになって、開業後も上手くいっておられます。このことから、年齢を重ねられている人の方が失敗は少ないと言えます。
匿名女性院長:そうでしょうね。仕事における経験とか、人生においても山越え谷越えといった経験があるので、若い人とは違うと思います。
コンサル西川:これまでの人生経験を活かして患者さんの気持ちを理解して診療ができるのが、この年代だと思います。
匿名女性院長:私の病院でもそうでした。
若い看護師さんに色々と苦情を言っている患者さんはいるのですが、40代以上の看護師さんに対するクレームはほぼありません。習得に時間がかかることはありますが、気遣いなどの面は人生経験がものを言います。
コンサル西川:匿名院長のこの話を聞かれて、40代、50代でも臨床現場に戻ってやれるんだという意識に変わって頂ければ、私もコンサルとして全力でサポートできると思います。
匿名女性院長:本当にそう思います。
若い看護師さんばかりだと、どうも職場の雰囲気がキリキリするんです。やはり、互いに競い合ってしまうからでしょうか。
病院には、テキパキとどんどん仕事をこなしてしまう人も必要なんですが、一方で、「そうなんですか」「そうですよね」とゆったりと患者さんの話を聞ける人も必要なんです。
コンサル西川:本日はお時間を頂きまして、有難うございます。
※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。