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これからのキーパーソンは女性獣医師だが業界には課題も多くある

女性勤務医,復職,動物病院,働き方

女性獣医師の本音トーク その1 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオ が独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

院長に育児経験がある人だと働きやすいかも。


専門性や得意分野をもつことで自分なりの働き方ができる

動物病院での体験談

匿名・女性獣医師(勤務医→院長夫人)
 私は、牛や馬などの大動物の臨床獣医師を4年間行った後、地元の動物病院で勤務医として4年間働きました。
 勤務体制は、
  •   勤務時間:8時半~21時(遅い日は日をまたぐことも、月2,3回)
  •   休憩は日によりますが、0~1時間程度
  •   休日は週に2日(うち1日は勉強のため出勤もしくはセミナー等勉強会)
  •   獣医師3,4名の地域の動物病院、休診日なし
 という状況でした。

 4年間の勤務中、長期休暇はとったことがなく、最大でお正月に3連休をいただきました。

 土日勤務は必須でしたので、友人の結婚式に行けなかったことが残念でした。

 自分が勤めていた動物病院は、担当医制でしたので、基本的には1つの症例を自分1人で解決するというスタンスでした。

 それに、自分の中途半端が嫌いという性格があわさり、夜も休日も返上して働きました。

 勉強のためにはとても役立ち、飼い主様からの信頼も得られた感じがしました。



 ただ、実際は体が悲鳴をあげており、帯状疱疹や猫アレルギーの発症、重度の肌荒れも経験しました。

 いまはタバコもお酒もしていないですが、当時はストレスが強く、喫煙者でお酒にも頼っていました。



 また、働いていた当時はタイムカードがなかったために、労働時間の管理がなされていませんでした。

 それゆえ、どの程度働いているのかを院長のみならず、自分自身も把握ができていませんでした。もちろん、休日や夜間の出勤も考慮されず、給料にも反映されませんでした。(給料は固定給;月給制でした。多少のボーナス的なものはありました。)

 知識や経験を得るためには、ある程度がむしゃらに働くことがよしとされる世界であったため、そのような当たり前の勤怠管理ができていなかったのかもしれません。

 現在では、タイムカードの導入と診察時間以降(19時以降)の残業手当が出るように改善さました。

 また、病欠以外の有給休暇も積極的にとれるようになり、職場環境もだいぶよくなったと思います。


【追記 コンサル・西川からの匿名先生への質問】

西川:現在ではタイムカードの導入や残業手当が出るなどの労働環境の改善がみられますが、何かのきっかけがあったのでしょうか。

匿名先生:人が増えて、病院を移転せざるをなくなるほどに規模が大きくなったためです。そのため、社会保障などの制度を入れなくてはならなくなり、結果として労働環境改善につながったのだと思います。

西川:有給休暇取得についてです。一般企業では制度としてあっても取得しづらい現状がありますが、積極的にとれるようにする工夫をなにかされていますか。

匿名先生:病院側から働きかけるよりも、友人の結婚式とか法事とかでの休みがとりやすくしているので、その休みが有給扱いになっています。休みはスタッフ側から言っていくのが基本で、余った有給分は年末あたりで調整するようになりました。
女性勤務医,復職,動物病院,働き方

勤務医と院長夫人として人を採用する立場の両者の視点で考える

 主人が動物病院の院長ですので経営のことについてはよく話しますが、やはり女性獣医師よりも男性獣医師の方がやめにくいという特性があるためか?新卒もしくは若手の男性獣医師を募集する傾向にあります。

 女性はいつかやめてしまう、復帰システムを導入するほどの余裕や前例がない、実際数年後に戻ってこられたところで、空きがなくどう対応すればいいのか分からないなどがあるのかもしれません。

 また、突然休まれることは、同時に働いている獣医師に大きな影響が出る、午前のみで帰られたら結局午後の診察は誰かがいないといけないという状況もあり、やはり体力がある若い男性を採用したくなってしまうのかもしれません。

 ===【追記 コンサル・西川からのコメント】===

 匿名先生のこのご意見に追加してコメントします。

 メディカルプラザが多くの院長からお伺いするのは、男性は開業を理由に辞めるケースが多いので、事前に相談するが、女性は突然に辞めると言われるので困る」とのこと。

 この点は女性獣医師にも事前に伝えるなどの配慮が大事であると言えます。

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 私は勤務医として4年間、院長の補佐として経営を4年間ほど見ております。

 勤務時間についての両者の感覚のズレについてですが、私はそこまで大きく感じませんでした。

 というのも、臨床獣医師として台頭するためにはある程度の場数が必要ですし、救急の対応や獣医師1人での処置などは時間外でないと体験できないことも多いと思うからです。

 

 自らの意思と経験の構築のために行っていたため、当時は働く時間すべてが給料に反映されるべきだとも思っていませんでした。

 今考えると、非常に過酷だったと思いますし、解放された今はとても精神的・身体的に楽であることを実感しています。

 

 ただ、そういった思考があるがゆえ、やはり急な欠勤や短時間労働などについては、まわりの従業員のこともあわせて考えると、難しいのかな…とも思います。

 1人だけそういう方がいらっしゃると、周りのみんなから不満が出ることも想定されます。

現に、妊娠していた動物看護師さんが受付業務しかできないことを、不満に感じている同業者もいました。

 

 とてもうまく回っている職種として、同職場にいたトリマーさんがあります。

 ベテラントリマーばかりというのもありますが、こちらは急患がないためもあり、必ず定時で退勤しています。

 腕の良いトリマーであればあるほど非常に効率的で、専門職として見習うべきところも多いです。

 

 ただ、獣医師においてはこれがとても難しいです。

 『仕事が早く(定時に)終わる獣医師=できる獣医師』というわけではないです。

 

 できる獣医師ほど仕事が多くなった結果帰りが遅くなり、そうではない人においては早く帰れるという矛盾が生じてしまいます。

 

 仕事の分担や効率化は重要で改善しなければいけない点です。

 単一の動物病院で行うことは難しいことも多く、業界全体が変わっていかないといけないのかもしれません。



【追記 コンサル・西川からの匿名先生への質問】

西川:できる獣医師に仕事が集中するのは、一般企業でも同じです。これを放っておくと、できる人から辞めてしまいます。そこで、能力給や役職などで給与に差を付けることで対処をするわけですが、動物病院の場合はどうなのでしょうか。

匿名先生:獣医師は1年目よりも5年目の方ができるようにはなるので、経験年数によって給与に差が生じるようになっています。できる人とできない人とでは帰る時間が違ってくるのも矛盾ですが、1年目からできる人がいたとしても、3年でできない人とは経験年数の違いで給与差ができてしまうというのも矛盾していることだと思います。これは業界全体の矛盾ですので、業界全体で取り組んでいかねばならない問題なのではないかと思います。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオ は、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。