女性獣医師が復帰出来る「優しい病院」の秘訣とは?
女性獣医師の本音トーク 特別編 / 院長による女性院長インタビュー
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオ が独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
※ベテリナリオでは、女性獣医師に勤務状況や給与、現役継続・復職のための条件、院長への提言などを募集していますが、現役院長が「女性に優しい病院として実際に女性獣医師が復職されている動物病院の女性院長のインタビュー記事をお送り下さいました。
この記事は、ベテリナリオが院長に「優しい病院とはこうあるべき」とお伝えしたい内容がズバリありますので、「女性獣医師の本音トーク」というタイトルではありますが、特別編として掲載します。
S女性院長に聞く、女性獣医師を復帰させている病院の秘訣
女性獣医師が小動物臨床の現場に復職することについては、比較的多くの条件を理解した上での選択肢があります。
今回、1人の女性開業獣医師に話を伺うことができたので、それをベースに会話形式で話をまとめてみました。
この院長は、開業をして30年を越え、現在2人の獣医師と10名ほどの動物看護師が働く動物病院の院長(S院長)です。
匿名院長:
「最近の女性獣医師の雇用に関してですが、過重労働や低賃金、獣医師不足などが問題とされているようですが、S院長はそのことについてどう思われますか?」
S院長:
「未だにそんなところが結構あるの? 獣医師不足なら条件よく働けてもいいはずなんだけどね。確かに、昔は過重労働だったりの時代はあったと思うけれど…」
匿名院長:
「労働基準法に従っていない動物病院なんかは、多くないですか? それ以前に、労働基準法自体を理解していない病院とか。」
S院長:
「正直、以前はブラックな病院は多かったと思う。うちも、ブラックからホワイトにしたら大丈夫やっていいけるのかなって、考えた時期もあったけど、今はグレーでもない完全ホワイトでも何とかやってはいけるんだって言うことがわかって、本当に完全にホワイトでやってる。」
匿名院長:
「S院長の病院は、女性だけのスタッフの病院でしたよね。獣医師がパートで働く場合に、賃金面で時給はどのくらいが妥当な金額だと思われますか?」
S院長:
「そうだね、1500円~3000円くらいなのかな? ただ、時給だけ高ければいいのか、そこに雇用保険をつけたり、社会保険もつけたりってなると、手取り額はかなり変わってくるからね。」
匿名院長:
「確かに、この仕事をどれだけ長く続けたいのか。例えば、子どもが大学を卒業する時までとか、いや、定年になるくらいの歳まで働きたいとかいろいろでしょうし、今できるだけ多くのお金が必要なのか、老後に安心するために働きたいのかで、その辺りの事情(雇用条件)も変わってきますよね。」
S院長:
「そう言った事も、雇用契約を結ぶ時には、しっかりと話して決めていく事が大事だと思う。」
匿名院長:
「S院長が女性獣医師を雇う上で、望むべき条件は何でしょうか?」
S院長:
「動物病院の規模や、雇い主がどういう病院かによっても望むものは違ってくると思う。例えば、少人数で運営している病院ならば、院長をサポートする力のある人が理想だと思うし、大人数の病院なら、スキルのある人が求められたりすると思う。」
復帰にはどんなスキルが求められるのか?
匿名院長:
「S院長のところに今いる女性獣医師は、どんな獣医師ですか?」
S院長:
「1人は新卒。もう1人は経験者。経験者の方は、画像診断が得意で、私がどちらかというと苦手な分野だから助かっている。」
匿名院長:
「ある分野に特化している人がいると心強いですね! 外科手術についてはどうですか? どの位のスキルがと助かりますか?」
S院長:
「とりあえずは、避妊手術と去勢手術ができればいいと思う。難しい手術なんかは、むしろ、それぞれ得意な病院や先生がいるから、そこに紹介したほうがいいと思っている。」
匿名院長:
「そもそも、個人病院は総合病院ではないのに、今まで個人病院は多くの事をやりすぎていたのかも知れません。これからは、もっと専門的に分化した形の病院が増えていくかも知れないですね。
新卒の獣医師を雇用したとのことですが、将来的に結婚や出産・育児など、女性獣医師ならではの事象があるかも知れないと言う上での雇用だと思うのですが、その辺りはどうお考えですか?」
S院長:
「産休や育児に関しては、制度があってきちんと機能していると戻りやすい。でも、以前雇用した女性獣医師は産後に、以前働いていた病院を辞めてうちに来た。」
匿名院長:
「制度だけあっても実際には使えない病院も多いですから、女性獣医師としては戻りやすいと言う環境ではなかった。砕いて言えば、戻れる空気にはなっていなかったと言うことでしょうか?」
S院長:
「そういうことだね。それから、うちの場合は、近くに保育所があって、子どもを預けやすい環境が整っているというのも大きいかな。」
匿名院長:
「仕事場の近くで子どもの送り迎えができるというのは、非常に安心できる要因ですね。急に子どもが具合悪くなって迎えに行かなければいけなくなるなんてことも、頻繁にあったりします。」
S院長:「そう。急に休んでも快く働ける。居心地がいいって言うのは凄く大事。」
匿名院長:
「それには、私も大いに共感します。そんな、女性獣医師の方達は、自分の中でどこまでの仕事のスキルを考えていると思いますか?」
S院長:
「女性は勉強にはガツガツしないね。全ての時間を投げ打ってまでは出来ない。男性と違い、やっぱり、育児や家事も女性が多くのウエイトを占めているから。」
匿名院長:
「男女平等と叫ばれて久しいですが、決してそうではないですよね。」
S院長:
「そうではないね。それが良いか悪いかは別として。子どもが小学生くらいになれば、仕事でバリバリやるのも可能ではあるのだろうけど、そこまでの人は稀だろうね。私の身近では1人も知らない。」
匿名院長:
「今は、小学校・中学校では習い事や塾などで、忙しく送り迎えするお母さんたちが多いですね。スポーツなんかだと、遠征して試合があったりすれば一緒に同伴したりとかもありますし」。
女性獣医師が病院側に最も望むこととは?
匿名院長:
「話を戻しますが、女性獣医師が最も望むことは集約するとどうなりますか?」
S院長:「時給や給料が多少安くても、安心して働ける職場だと思う。」
匿名院長:
「安心して働ける職場。居心地のいい職場。急な休みも快く引き受けてくれる職場ということですね。」
S院長:「そのとおりだね。」
匿名院長:
「S先生の現在の企業理念に深く同意いたします。こんな動物病院であれば、女性獣医師も復職して、末永く安心して働けますね。今日は、貴重なご意見を伺う事が出来てとても参考になりました。 ありがとうございました。」
※メディカルプラザ・ベテリナリオ は、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。