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女性獣医師の本音トーク その6(①働く現場の生の声+②院長への提言)

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女性獣医師の本音トーク その6(①働く現場の生の声+②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオ が独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

女性獣医師の復職に関する課題

匿名・女性獣医師(公務員→パート勤務医→時給公務員)

 私は、地方公務員と動物病院の勤務を経験し、今は研究機関の非常勤職員をしています。2度の転職の理由は、子育てのための時間的及び精神的余裕を確保することでした。

 今、女性獣医師の現場離れが深刻となっているようですが、おそらく、その理由の大部分は「仕事と家庭の両立の難しさ」にあると思います。将来を考えた時に、臨床に対する課題がいくつかあると思いますが、私が感じたことを述べたいと思います。

 

 まず、新卒の就職時です。私が学生だった頃は、小動物臨床の詳しい業界事情はほとんど伝わってこなかったように思います。アルバイトを兼ねた病院実習を募集しているのは大手の病院がほとんどで、その他は仲の良い先輩からの情報くらいだったと記憶しています。当時、「小動物臨床の世界は、3年~5年で開業のために病院を出される。勤務医として長くはやっていけない」という噂がありました。

 また、個人の動物病院だと、社会保険等も自分で加入しなくてはならず、福利厚生も期待できない。休日もほとんどとれない。そういった印象がありました。

 

 

【追記  コンサル・西川からのコメント】

 昔は匿名先生のご指摘のとおり、3年から5年で開業のために出される動物病院が多かったのですが、今は勤務してもらえるのであれば、ずっと勤務して下さいという病院が圧倒的に多いので、3年から5年で出されることはなくなっています。開業する人も開業を希望しない人も、両方共に歓迎されるようになっています。この人材不足によって、動物病院の求人の姿勢や勤務医に対する考え方が大きく変わってきていることをお伝えします。

 

 

私が臨床分野への就職を目指さなかった理由は、

  • 小動物臨床の道に進んだとしても、開業するつもりが無かったこと。
  • 小動物よりも産業動物や野生動物等に興味があったこと。
  • 結婚、出産、育児の制度に不安があったこと。
  • 様々な職種の人と出会いたかったこと。
  • 趣味の時間も大切にしたかったこと。
等でした。

 そして、動物病院への就職活動をしないまま、地方公務員の畜産獣医職に就きました。
 公務員では、産育休制度が充実していたため、金銭的な不安は無く、安心して出産・育児をすることができました。また、自分自身や子どもの病気の際に使える有給休暇が充実していたことも安心材料でした。ただ、制度は充実していても、問題点も多くありました。

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育児明けの働きにくさを理由に公務員から転職

私が転職をしようと思ったきっかけは、育児休業明けの働きにくさでした。

 半年間は1時間短縮勤務、後半は1時間早出をしてフルタイム勤務で働いていましたが、保育園1年目の兄弟が月に1回は時間差で発熱し、急なお迎え、通院、発熱後の休養期間等により、月の1/3~半分は働けない状態が続きました。上司の世代は、まだまだ「女性が家事育児を担当する」という考えが根強い人もおり、子育てしながら働いている女性の上司が少なかったため、「お互い様」と割り切ることができず、精神的に辛い日々が続きました。どうしても休めない会議が控えており、親や夫にお願いして後ろ髪を引かれる思いで出勤したこともありますし、自分自身が子どもから風邪をもらってしまったこともありました。

 

 コロナ禍の利点と言っても良いかと思いますが、今は在宅ワークが浸透してきたので、少し事情は変わってきたと思いますが、当時は、溜まってしまった仕事を、持ち帰ったり、月に何回か夫に早く帰ってもらって残業したり、休日出勤の際に片づけたりしていて、時間的なやりくりが大変でした。休日や夜間の緊急対応も多く、年齢を重ねると生じてくる役職的な責任の大きさと育児のバランスを取ることが難しく、正規職員として仕事を継続していくことに限界を感じてしまいました。

 

 そこで、知り合いの動物病院の院長に相談して、短時間勤務で働かせてもらうことになりました。通常の病院勤務は、午前診療、長めの昼休み、手術、夕方の診療となりますが、私は昼休みを短縮し、その間に事務仕事や往診をすることで、夕方早く帰らせてもらっていました。通勤時間を加えた拘束時間は8時から17時でしたが、保育園の送迎も入れると7時半から17時半過ぎ、という感じでした。

 

 卒業して時間が経って、獣医師免許を持っているからには、一度は臨床現場で働いてみたい、と考えることが増えていたこともあり、充実した日々でした。また、子どもに「お母さんは動物のお医者さんなんだよ」と言えるのも、誇らしい気持ちでした。

 

 しかし、仕事に慣れてくると、自分の知識と技術の不足を補うための勉強時間がなかなかとれないことに激しい焦りを感じるようになりました。帰宅後、息つく時間が無いまま食事の支度をし、片づけ、お風呂に入り、寝かしつける…と、正に分刻みのスケジュールで動いていて、夜は子どもと一緒に自分も寝てしまうことが多く、セミナー受講や専門書を読むことができず、自己嫌悪から心身が更に疲弊していく、という悪循環に陥ってしまいました。

 

 夕方以降の急患対応が他の獣医師の負担となってしまうこと、私が帰った後に来た患者さんの情報がリアルタイムで得られないこと、夜間当番に入らないこと、等が申し訳無く感じてならず、フルタイムで働ける獣医師を雇ってもらった方が病院のためではないか、と思い悩むようになりました。また、往診で遠くに出ていたり、長い手術が入っていて抜けられない時に限って、子どもが体調を崩してしまうことがあり、せっかく転職したのに、思うように家庭との両立ができないことが何より辛かったです。

 

パートの条件を自ら交渉することは難しい

 現在は、家事と育児を最優先と考え、非常勤職員として勤務しています。病院勤務の時のような充実感はありませんが、仕事に拘束される時間が2時間程度減り、時間的な余裕が生まれています。

 

 私にとっての2つの転機で感じたことは、まず、動物病院の情報が欲しい、ということです。特に、フルタイムでなくても雇いたいと考えている病院があるのかどうか、その場合、勤務時間がどこまで融通が利くのか、時給はいくらか、等です。私が勤めた病院は、勤務時間の自由はある程度聞いてもらえたと思うのですが、他の獣医師の忙しさを目の当たりにしてしまうと、これ以上の短縮は難しいと感じてしまい、交渉ができませんでした。また、勤務時間を減らすと当然ながら収入も減るため、家計のことを思うと、むしろ勤務時間を増やさないと…と思ったことも事実です。

 

 パートタイムである程度条件が良ければ働きたい、と考えている休職中の獣医師は多いと思いますが、一般的な求人情報はフルタイムが前提のものが多く、パート可能な病院を探すことがまず困難です。また、パートの条件を自ら交渉することはかなりハードルが高いことです。「このくらいで働ける病院があったらなぁ。無いだろうなぁ…」と漠然と考えている人に、「あなたの希望に合う病院、ありますよ!」と教えていただける場所があったら、かなりの需要が見込めるのではないでしょうか?

 

 

【追記  コンサル・西川からの匿名先生への質問】

西川:時間の自由度以外に、女性獣医師の希望についてこの原稿を書くに当たって思い浮かぶことがありましたでしょうか。

 

匿名先生:子育てや家事は、あまり報われないと思っている方も多いのではないでしょうか。そのため、社会に出て評価されたいとの希望はあると思います。

 

 しかし、勤務時間が短いことで生じる劣等感、他の獣医師への罪悪感、この点をどうすればいいのかのアイデアは浮かばないのですが、もう一度、活躍したいとの思いは多くの女性獣医師が持っているのではないでしょうか。

 そこで、1つは、多様な働き方を許容してもらえること。2つは、パート勤務なので時間通りに気持ち良く帰れるような職場環境にして頂くこと。この2点を病院側には求めたいと思います。

 

 

【追記  コンサル・西川からのコメント】

 パートタイムで働ける動物病院が非常に増えてきています。

 

 しかし、この情報があまり知られていないのは、パート勤務、短時間勤務で働ける動物病院の情報があまり整備されていないためです。ベテリナリオはその情報を整理して復職したい獣医師に届けられるような仕組みづくりができないかと考えております。

 

女性獣医師,復職,動物病院,転職,課題,家庭,両立

メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。