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獣医師数にゆとりがなければ働きやすさの改善には取り組めない!

女性獣医師,復職,動物病院,人手不足,パート勤務,労働環境

女性獣医師の本音トーク その14 Part2(②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオ が独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

患者数に対して獣医師数にゆとりがなければ、働きやすさには取り組めない 〜 勤務医と人を採用する立場の両者の視点で考える ~

匿名院長夫人(獣医師)

 

 私は勤務医として4年間、院長の補佐として経営を4年間ほど見ております。

 勤務時間についての両者の感覚のズレについてですが、私はそこまで大きく感じませんでした。

 

 というのも、臨床獣医師として台頭するためにはある程度の場数が必要ですし、救急の対応や獣医師1人での処置などは時間外でないと体験できないことも多いと思うからです。

 自らの意思と経験の構築のために行っていたため、当時は働く時間すべてが給料に反映されるべきだとも思っていませんでした。

 

 

 今考えると、非常に過酷だったと思いますし、解放された今はとても精神的・身体的に楽であることを実感しています。

 ただ、そういった思考があるがゆえ、やはり急な欠勤や短時間労働などについては、まわりの従業員のこともあわせて考えると、難しいのかな…とも思います。1人だけそういう方がいらっしゃると、周りのみんなから不満が出ることも想定されます。

 現に、妊娠していた動物看護師さんが受付業務しかできないことを、不満に感じている同業者もいました。

 

 

 とてもうまく回っている職種として、同職場にいたトリマーさんがあります。

 

 ベテラントリマーばかりというのもありますが、こちらは急患がないためもあり、必ず定時で退勤しています。腕の良いトリマーであればあるほど非常に効率的で、専門職として見習うべきところも多いです。

 

 

 ただ、獣医師においてはこれがとても難しいです。

 

 『仕事が早く(定時に)終わる獣医師=できる獣医師』というわけではないです。

 できる獣医師ほど仕事が多くなった結果帰りが遅くなり、そうではない人においては早く帰れるという矛盾が生じてしまいます。

 

 

 仕事の分担や効率化は重要で改善しなければいけない点です。

 単一の動物病院で行うことは難しいことも多く、業界全体が変わっていかないといけないのかもしれません。

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【追記  コンサル西川からの匿名女性院長夫人への質問】

 

コンサル西川:多くの女性獣医師に話を聞きますと、パート勤務では、すぐに帰れる環境か、帰れない環境かではっきりと分かれてしまうとのこと。これは、院長の配慮次第でこの違いが生まれている。

 先生は、女性獣医師が抱えているこの問題について、「単一の動物病院で行うことは難しい」と書かれていますが、女性獣医師の要求を受け入れている動物病院もたくさんあります。

 急な早退・休みについては、常勤勤務医が対応するしかなく、それができなければ院長が対応することになる。この点について先生は「難しい」と書かれていることは、こういった女性獣医師を雇うことは難しいと言う意味でしょうか。

 

匿名院長夫人:そうです。女性に限らずですが。

 

コンサル西川:対応ができる病院とできない病院、どこに違いがあるのでしょうか。

 

匿名院長夫人:患者さんの量と獣医師の数ではないでしょうか。

 

コンサル西川:院長と勤務医の2人の病院でも、早く帰らせている病院もあります。この獣医師の数は関係がない様に思えるのですが。

 つまりは、院長次第なのでしょうか。

 

匿名院長夫人:来院数も関係してくるのではないでしょうか。

 忙しくない病院ならば獣医師2人でも早く帰れるでしょうが、忙しければ帰れない。単純に院長の問題でもない様に思います。

 

コンサル西川:獣医師が常時5人以上いる、忙しい病院でも、例えばこのコロナで濃厚接触者になった人がいて、急に出られなくなった時も対応できると言っていましたので、普段から患者さんの数に対して、獣医師の数に余裕があるか否かで、こうした対応ができるか否かも決まるということでしょうか。

 

匿名院長夫人:そうだと思います。

 

コンサル西川:患者さんに対して、獣医師の数に余裕がある動物病院でなければ、女性獣医師は働きづらくなるということでしょうか。

 

匿名院長夫人:そうだと思います。

 

コンサル西川:忙しい中で女性獣医師から急に早退したいと言って来た場合には、どうされているのでしょうか。

 

匿名院長夫人:急な場合だと、最悪は病院を閉めることになると思います。

 

コンサル西川:今日は対応できないので、他の病院に回してしまう。

 その意味でも、予約制の方が対応はしやすいのでしょうか。

 

匿名院長夫人:予約制は導入しづらい点があると考えています。例えば、具合の悪い子が来ているのに、予約が入っているからとワクチンの子を診なければならないとか。

 ただ、来院する患者さんがわかっているので、時間管理はできる様になるのではと思います。

 

コンサル西川:予約制といっても、急患は先に診ます。さすがに急患を断ることはできませんし、その予約時間で来ている飼い主さんも「急患なので」と言えば、納得してくれますので。

 この予約制についても、獣医師の数に余裕が必要であるとは思います。

 先生の動物病院もあまり余裕がない感じでしょうか。

 

匿名院長夫人:そうです。人手不足で余裕はないです。

 

コンサル西川:人手不足で余裕がないから、女性獣医師の働きやすさには対応できないという悪循環になっていると思われます。つまりは、余裕がある動物病院が増えれば、女性獣医師の働ける場も増えるのでしょう。

 患者数に対して獣医師の数に余裕があれば、働く環境にも余裕が生まれ、そういう動物病院だからこそ、また獣医師がやってくるとう好循環になる。

 

 

■この記事には<前編>があります。<前編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。