ある女性獣医師が鍼灸・東洋医療に行き着いた理由とは?
女性獣医師の本音トーク その17 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
《シリーズ企画 臨床現場復帰までの軌跡 その1》~N女性獣医師のコーチングを活かしたリアルルポ 前編~
新卒後、代診3年を経て、結婚・出産・育児に入る。途中パート獣医師として試みるも、両立が難しく、その後7年育児に戻る。通算13年後のパートからの復帰であるが、今は高齢動物の介護を専門とした独自の位置を確立する。
現在、メインは往診で老犬介護のリハビリ(鍼灸とリハビリ)を行っている。
・A動物病院(都内)にて、週2回×4時間、高齢動物のカウンセリング
・高齢動物のリハビリ施設にて、鍼灸メインのパートタイム
【新卒で都内動物病院にて代診を開始】
Q:都内に就職されたのは、どんな理由でしたか?
「私が就職した病院は女性獣医師が院長で、憧れ的な意味がありました。女性獣医師として立派になるには、やはり『最初に習う先生や病院の環境』の影響が強いと思いました。ただ、学生時代からお付き合いしていた男性がいて、その方と結婚する予定もあり、1年で退職するのが前提の就職でした。
当時の常識からしたらありえないとは思いますが、若気のいたりといいますか、そんな自分を受け入れていただいた院長に今も感謝しております。」
【1年で新潟の病院に転職】
「新潟の病院に転職しました。私は、臨床でまず3年は働こうと計画していました。
3年の臨床経験は、獣医師として最低限のラインだと思っておりました。ですから、新卒の病院と新潟2年で合わせて3年間、代診として働きました。」
【女性として避けては通れない妊娠、出産、育児】
「結婚した後、妊娠、出産、育児の時間をしっかりとるものと思い、退職して主婦業に専念しました。
約6年間、子供との時間を取りました。」
【少し子育てが離れてきた頃に…】
「子供が小学校に上がった時に、少し育児から手が離れて時間を取れるようになってきました。しかし、新卒時のように一日中働けるわけではありませんでした。
当時、横浜に引っ越してきていたので、電車で1時間程度の複合施設の動物病院でパート獣医師として週1回の勤務をしました。働く内容は、常勤の獣医師が休みの日の留守番、予防注射、健康診断などです。しかし、病院が自宅から遠く離れていたことで育児との両立が難しく、半年ほどで退社しました。」
【再び母親として、人としてできることを】
「この後、学童スタッフなどのパートタイム勤務など、獣医師以外の職業で働いたり、活動をしたりするようになりました。
よく考えると、この時期に経験した社会経験は、通常の男性獣医師のようにずっと動物病院業界で働き続けるとできなかったと思いますし、人として、親として、社会人としての熟成ができたと思います。何事も、今の診療にも役立ちますし、よかったと思っています。」
【そろそろ良いかな、と少しずつパートを始めた時期】
「7年くらい経ち、2010年に近所の『高齢動物クリニック』にてパートタイムの勤務を始めました。週2回勤務でしたが、こちらは新しい病院で事業方針がまだ定まらず安心していられる感じではなかったので、残念ながら結局退社しましたが、この時に自分自身の獣医師としてのビジョンが定まってきたのです。
高齢動物専門のクリニックでしたので、高齢動物に役立つことに興味を持ちました。鍼灸、老犬介護などのセミナーを受講し、高齢動物のケアの学びを深めていった時期です。こちらでのご縁で、このような良い経験をさせていただき、感謝しています。」
【自分に合う働き方を探して】
「電話相談の獣医師や、予防診療の獣医師などを転々として、また高齢動物のケアのセミナーを受けながら、そのままセミナーの病院で働いたりしています。
高齢動物ケアをしていると知っていただいた方から、「高齢動物のセミナーをしてもらえませんか?」とお声かけいただいたのがご縁で、自分がアウトプットする機会をいただくようになりました。そのおかげで、今の仕事にも繋がっています。」
【鍼灸、東洋医療に行き着いたわけ】
「やはり、家庭にいて、社会全体をみてきた経験から、どのように高齢動物を介護していったら良いか、そのニーズなどで家庭にてケアできることが必要不可欠と思いました。
困っている飼い主さんを助けるネットワークなども必要と思いましたし、そこに入る動物の専門家として女性獣医師はピッタリだと思います。」
【追記 コンサル西川からのN獣医師への質問】
コンサル西川:外科などの西洋医学は技術進歩が著しいので追い付くのが大変と聞きます。一方で、鍼灸などの東洋医学は体系化されているので変化が少なく、女性獣医師に合うのではないかという話を他の女性獣医師からも聞くことがあります。
M先生はこの東洋医療に行き着いたことを「女性獣医師にピッタリ」と表現されていますが、どんな点でピッタリだと思われたのでしょうか。
N獣医師:鍼灸は、東洋医学の中でも積極的な治療に当たります。この東洋医療は、呼吸法や手当てとかで自然治癒力を高めて治していくといった、お母さん的な治し方であると私は捉えています。
西洋医療の外科手術とはまるで違います。
ヒトでも生活習慣病と言われるように、動物の病気もほとんどがその飼い方で作られます。予防医療として家庭内での飼い方や食事の指導をするのも獣医師の役割で、育児中の女性獣医師の働き方に合うのではないかと思います。
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※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。