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ママ獣医師がこれまで歩んできた道を振り返って

女性獣医師,復職,動物病院,企業,ビジネススクール,臨床未経験

女性獣医師の本音トーク その18 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

《シリーズ企画 臨床現場復帰までの軌跡 その2》~N女性獣医師のコーチングを活かしたリアルルポ 前編~

【ケース 2】 Y女性獣医師(40代)

新卒で企業にて新薬開発のための動物実験などを担当。主婦をしながら企業内でプロジェクト開発なども担当し、3人の出産、子育て中に動物病院を訪問し、実習を経て、この春から動物病院でパート勤務をする予定。
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【新卒で企業に就職】

Q:企業に就職しようと思ったわけを教えてください。

 

 「私は、学生時代に病院実習で現場を見た時に、違和感を覚えました。動物と向き合うのは素晴らしいけれど、忙しさの毎日で、他の経験が疎かになってしまうと思いました。そして、もっと一般社会で視野を広げてから、臨床へ向かう方が良さそうだと考えました。

 その後、動物福祉に注力している企業と出会い、臨床に近いこともしながら動物と触れ合えそうな企業へ就職することにしました。就職当初から、いつかは小動物臨床へ行くという意識を持っていました。」

 

 

Q:企業で担当したお仕事内容を教えてください。

 

 「企業では、動物実験でマウス、ラットなどの採血や解剖、オペなどをたくさんしました。薬物動態などについて自然と詳しくなれました。

 上司がとても部下思いの人で、私が希望する動物福祉につながるプロジェクトなどに参加させて下さったりして、獣医師としてもやりがいを感じながら過ごしてきました。

 そうした経験は、動物病院での仕事に活きてくると思っています。また、大きな企業での職場経験は、チーム作りなどに貢献できるかもしれないと思います。」

 

【企業での育休2年】

 Q:企業での出産休暇と、育児休暇はどのくらい取れましたか?

 

 「企業では、出産休暇前に有休を消化し、その後は産後2年まで育休取得できます。3人出産して、最初の2人は連続で出産と育休を繰り返しました。そのあと一度復職し、3人目を出産しました。今は2度目の育児休暇が終わるところです。

 育休中には、会社の補助制度でオンラインビジネススクールへ通わせて頂き、業界を越えた仲間と共に学ぶことができました。動物病院では育児休暇を取られ復帰したという女性獣医師のお話をほとんど聞かないので、その恵まれていた環境に大変感謝しています。」

 

【え?私、ここにいてもいいの?(1度目の育休あけ)】

 「1度目の育児休暇から復職した時は、子供達が小さくて急な呼び出しもあり、周囲が配慮くださった結果、代替可能な簡単な業務を任せられるようになりました。

 挑戦したいことにも、時間的制約からできないと自分でブレーキをかけていました。仕事にやりがいを求めていた自分には、1度目の育児休暇あけの仕事は、本当に辛いものでした。

 そして、この時期は仕事を辛く感じながら家事にも追われ、子供と向き合う時間を取れずに悩んでいました。職場でも家でも、自己肯定感が低い状態に陥っていました。」

 

【そして今、2度目の育休へ】

Q:2度目の育児休暇は、1度目と比べていかがでしたか?

 

 「2度目の育児休暇は、1度目の時とは違い、子育ての塩梅もわかってきて余裕が生まれていました。そのおかげで、自分をみつめる時間をたっぷりとることができました。

 そこで、復職後へ向けた専門の勉強の他に、子供を面倒みながらでも参加できるオンラインのビジネススクールに通ったり、自己啓発系の勉強会を主催したりしました。

 これらを通じて、人生という大きな視点から今を捉え直し、異業種の方と交流することで視野が広がりました。さらに、自分の強みを発見し、新たなスキルを身に付けることもできました。これまでの自分とは違う体験をたくさんさせていただきました。

 そして、『本当に自分は今の仕事にまた復帰したいのだろうか?自分に向いているのだろうか?』『本当にしたいことは何か?』とじっくり考え、『小動物臨床へ舵を切るのは今だ!』と決めました。」

 

【やっぱり臨床がしたい!(臨床獣医師)(病院探し)】

 「2度目の育休後半は、小動物臨床へのキャリアチェンジを決めた後、卒業後から臨床を続けてきた先生へのインタビューや、近所の病院で定期的に病院実習をさせていただきました。話を聞き、実習して、楽しいと感じることができ、キャリアチェンジに確信を持てました。

 そして、育休が終わりに近づく頃、就職する病院を探しました。通勤時間と福利厚生で病院をふるいにかけた上で、院長先生の獣医療に対する考え方に共感できるかを大切にして選びました。今の院長先生と価値観がピタッと一致したので、今の病院に決めました。

 院長先生は、獣医師として臨床の現場に立てることに感謝していて、それを幸せに感じていること、そして、それを臨床未経験の私にも分かち合いたいと言ってくださったので、即決することができました。

 さらに、院長先生がスタッフを高く評価していること、院長先生自身が挑戦し続ける姿勢があったことに感銘を受けて、決意が強固になりました。」

 

 「育児しながらの働き方は、フルタイムでは勉強時間や子供と向き合う時間の確保が難しいと考え、週3回のパート勤務にさせてもらいました。保育園の預かり規則などもあり、休みの日には、在宅でキャリア支援の仕事(悩みを聞くことは診察にも繋がり、自らの学びにもなります)をします。

 こうして家庭と仕事の両立に工夫をしながら、いよいよ新たな道が開かれました。とてもワクワクしています。今は、近所の病院での実習時間を、就職先の病院での実習に充て、ワクチンなどの予防獣医師からスタートさせてもらっています。

 その後、女性獣医師ネットワークなどにも参加して、先輩の女性獣医師の体験談を聞きました。オンラインで月1回の談話会で、参考にさせてもらいながら、オンラインで学べるところも教えていただきました。これから獣医師としての再スタートが始まります。とてもワクワクしています。」

 

【これからも、心の声を聞きながら考え、獣医師として、母として、自分らしく】

Q:ここまでY先生の歩んだ道のりを振り返ってみて、ご自身が感じていることを教えてください。

 

 「『好きで楽しいことは何か?』を真剣に感じて、考える時間を持てたことが、本当によかったと思っています。

 そして、今までの仕事、結婚、出産、⼦育て、学びなど様々な経験を活かすことで自分の可能性がまだまだあることに気付けました。人生は1度きり。人生を切り出した時間はとても貴重なものです。子供との時間をしっかりとりながら、自分の感覚と思考を研ぎ澄ませ、自分らしい人生にしたいです。

 これから臨床を始めるので、まずは目の前の人のためにできることを増やしていきます。それと並行して、職場のスタッフや飼い主様はもちろん、職場を越えた方々、業界を越えた方々も巻き込んで、獣医療の価値の最大化を共に考え、その実現へ向けて精進していきたいと思っています。」

 

 

 

■この記事には<後編>があります。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。