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なぜ若手勤務医はすぐ離職するのか?3つの理由と改善ポイント①

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女性獣医師の本音トーク その19 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

若手勤務医がすぐに辞めないための3つの改善点 〜現役女性勤務医から院長への提言 前編~

○匿名女性勤務医

動物病院業界は獣医師、看護師ともに入れ替わりが激しい。特に若手がすぐに辞めてしまう傾向にある。その原因となる問題点について3点を挙げる。
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①長時間労働

 勤務時間の長さについての具体的な改善点について提案する。

 

 長時間労働の原因は、残業時間の多さが一番である。例えば、閉院が19時までの動物病院でも、人の病院のように最終受付時間が決まっていない動物病院が多い。

 たいていの飼い主は18時頃まで仕事をして、帰宅後に具合が悪くなった動物を見つけて閉院間際の駆け込みで来院されることが多いのだ。そのため、19時から検査、場合によっては手術を行い、21時を過ぎることも珍しくはない。

 

 このような事態を改善するために、

 ①最終受付時間を設定すること

 ➁シフトの早番・遅番制度を作ること

 を提案する。

 

 

 ①最終受付時間に関しては、緊急性の高い症例に関しては診察せざるを得ないが、予め周知しておけば、爪切りや皮膚のかゆみといった緊急性の低い症例を断る理由にすることができる。スタッフの残業時間を減らすには閉院時間の1時間前に設定すると良いと思う。

 

 ➁早番・遅番制度に関しては、導入したくても人手不足により実現できていない病院が多いと思う。そもそも遅番や夜間には重症の動物が多くなる為、経験のある獣医師がいないと成り立たず、負担が経験のある獣医師に集中してしまう懸念もある。また、遅番の帰宅時間がとても遅くなる可能性があるため、病院の近くに住んだ場合は家賃補助を出す等の配慮があれば希望者も増えると思う。

 現状、都心の動物病院で家賃補助を出しているところは少ないので、募集要項での大きなアピールポイントになると思う。

 

 

 

【追記  コンサル西川からの匿名女性勤務医への質問】

コンサル西川:この動物病院業界は、長時間労働が当たり前のような業界です。その中で、早番遅番といったシフト制を導入している病院が多いのは、匿名先生に書いて頂いた通りですが、12時から16時までとか、13時から16時までを「昼休み」にしている病院が多いので、このシフト制ではこの昼休み時間帯に一番勤務医の人数が多くなる状態が生まれてしまいます。

 匿名先生の病院ではこの問題をどのようにされているのでしょうか。

 

匿名女性勤務医:今勤務している病院には、この「昼休み」はありません。朝の9時から夜の19時まで、診療を受け付けていて、その間に予定が空いている勤務医が他の病院でもやっているように手術をすることにしているので、シフト制による問題はありません。

 

コンサル西川:昼休みは無いんですね。

 

匿名女性勤務医:病院としての昼休みはありません。他の病院で3時間とか、4時間を昼休みの「休診」にしている病院が多いですが、このシステム自体がどうなのかなと思うことがありました。

 

コンサル西川:そうなんです。この昼休みの時間帯で手術をするという仕組みですが、なぜこんな仕組みになってしまったのかは、いろんな院長に話を聞いても、「その理由はわからない」と言います。

 

匿名女性勤務医:毎日オペがあるなら意味があると思うのですが、オペが無いなら、勤務医はその時間は拘束されるだけの時間になってしまいます。

 

コンサル西川:その通りです。長時間労働の根本原因はこの「昼休みにある」ので、この昼休み時間に予約制の通常診療をするなどすれば、勤務医の労働時間を短縮することができるのですが。

 昼休みに外来を診ている病院はごく僅かで、ほとんどの病院が診ていません。

 

匿名女性勤務医:状態の悪い患者さんが来ると診る事はありますが。

 

コンサル西川:急患は診るでしょうが、通常診療はやっていない病院が大半です。

 この「昼休みをどうするか」は、動物病院業界が長時間労働を改善する際に非常に大事なポイントになるものと見ています。

 

➁給与面(月給・ボーナスについて)

 動物病院勤務の獣医師の給料は世間が思っているほど多くは無い。

 

 新卒はだいたいどの病院でも月給22~26万円で、みなし残業制度の病院が多い。つまり、この中に残業代が含まれるというシステムである。

 ほとんどの病院が、働いた分だけ残業代がもらえるというシステムが整っていないため、時給換算するとマクドナルドと変わらない時給1000円未満と言っている獣医師もいる。

 

 また、ボーナスに関しても世間の会社員とは大きくかけ離れている。

 年2回支給で各1か月分の病院が多い。通常の会社員であれば個人の業績によって数ヶ月分与えられることが多いが、そもそも数ヶ月分のボーナスを出している病院は珍しく、また個人の業績も評価しづらいこともあるため、一律1か月というシステムが多いと思う。

 

 私の病院に関しては、残業代は一部支給されるが、ボーナスに関しては年2回1か月分なので、1年目の年収は30万円(残業代含む)×12か月+ボーナス1か月分(1年目は冬のボーナスしか支給されず)で385万円程度であった。

 残業代は2年目以降はもう少しきっちりもらっているが、1年目の時は慣れないことばかりで、仕事が遅い為に残業になってしまう場合も多く、タイムカードを切ってから作業をするように(例えば、カルテ記入や終業後の掃除や器具の洗浄)先輩から言われ、残業時間の1/4程度(20時間分程度)しか残業代はもらっていなかった。

 

 

 

■この記事には<後編>があります。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。