なぜ若手勤務医はすぐ離職するのか?改善ポイントの提案
女性獣医師の本音トーク その19 Part2(①働く現場の生の声+②院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
若手勤務医がすぐに辞めないための3つの改善点 〜現役女性勤務医から院長への提言 後編~
【編集部:注】
Part1では3点のうち、長時間労働と給与面について語っていただきました。Part2では引き続き給与面について具体的な例を掲載するほか、最後のひとつについてお話を伺います。
動物病院業界は獣医師、看護師ともに入れ替わりが激しい。特に若手がすぐに辞めてしまう傾向にある。その原因となる問題点について3点を挙げる。
➁給与面(昇給について・具体的な例を紹介)
ハードに働きつつも全然収入がもらえない1年目の苦悩から、新人獣医師の士気が下がってやる気もなくなっていく原因にもなると思う。
昇給に関しては個人の技術によって年2~5万円(/月)程度は昇給する病院が多いので、この点に関しては一般の会社員より昇給しやすいと考えている。
なので、改善するのであれば、まずは、残業代を全額支給し、勤続年数に関わらず勤務時間分はカルテ記入時間も含めて残業時間とみなすことが必要と考える。
また、動物看護師の給料はもっと安い。月給15~18万円がほとんどで、あまり昇給しないと聞いたこともある。
なので、勤続20年近いベテランの看護師さんでも、新卒獣医師の給料よりも安い給料で働いていることも往々にしてある。この後記載するが、ベテランお局看護師から若手獣医師への嫌がらせで、精神的に辞めてしまう若手獣医師が多いことも問題である。
お局看護師がいじめたくなる理由として、入社したばかりで看護師の仕事もままならず、自分より仕事のできないような若手獣医師が自分より高い給料をもらって働いていることが納得いかないという話もよく聞く。このようないじめを改善させるためにも、動物病院で働く全スタッフの給料の底上げが必要と感じている。
【編集部・注】
国家資格である獣医師の給与があまりにも低すぎるとの声が多くの先生方から寄せられています。具体的にどれくらいの金額なのか。
匿名先生にお願いして、手取り額・額面給与と労働時間をきちんと算出して頂きました。
●具体的な給与について
私の病院に関しては、残業代は一部支給(カルテ記入や症例の勉強の時間は支給されない)されるが、ボーナスに関しては年2回、各1か月分である。売上によっては、ボーナスの額が増えると言われてはいるが、今まで1ヶ月分以上が支給されたことはない。むしろ直近2年間はコロナによる予約制限をしたために病院として売上が落ちたと言う理由で1ヶ月分以下の支給であった。(20万円ほど)
1年目の年収は、月30万円(基本給25万+残業代)×12か月+ボーナス1か月分(1年目は冬のボーナスしか支給されず)で385万円程度であった。時給に換算すると、950円程度であった。
2年目からは基本月給が年5000円から10000円昇給する。
6年目の今の年収は、月37万(基本給29万3000円+残業代)×12ヶ月+ボーナス2ヶ月分(1ヶ月分×2)で500万円程度である。
残業代は、繁忙期の3月から6月は10万円以上付くこともある。時給に換算すると1200円程度である。
③人間関係
動物病院は人間関係がうまくいかなかったり、嫌がらせを受けて辞めていったりするスタッフが多い。
これはどこの病院でもあると思うが、特にベテランスタッフの人間性によって人間関係は変わってくると思う。前述のお局看護師によるいじめは動物病院あるあるで、特に若手の女性獣医師がターゲットとなることが多い。
私が受けた嫌がらせは、昼食を食べていたら昼オペの見学に行かなくていいのか?と言われたこと、他の仕事をしていたら後回しにしても良いはずの掃除等の雑用をやらされ、その結果やりたかった仕事の邪魔をされたこと、自分のミスをスタッフ同士の悪口のネタにされること、(忙しくて自分も含めてみんなが電話に出られない状況で)電話がずっと鳴っているとなぜあなたは暇なのに出ないのか?と怒られる(新人は暇だと決めつけられる)…といったレベルの低い嫌がらせが多かったように感じる。
優しい人もいるのだが、一部の意地悪な上層部の眼が気になって誰も助けてくれなかった。唯一同期の看護師、獣医師が一人ずつ居たのが心の支えだった。
不思議なことに、入社して1年経ったら嫌がらせはほとんどなくなり、ターゲットは新たな新卒に移っていく。
これが、新人が続かない悪の根源と感じている。
また、お局になっているのが院長夫人であるケースも多く、これはどうすることもできないと感じている。
この人間関係の対策が一番難しいと感じているが、スタッフを女性ばかりにしないこと、第三者目線から嫌がらせやパワハラを監視し、そのようなことをしている者は減給や役職からの降格等の明確な罰を与えることはいかがかと考える。
家族経営の病院も多いので、あくまで「第三者」に評価してもらうことが必須と考える。
※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。