女性勤務医が思うコト「女性獣医師が働きやすい現場」とは?
女性獣医師の本音トーク その24 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
女性が多く働く動物病院で勤務しているからこそ言える、長く現場で活躍するために必要なこと <前編>
私の働いている動物病院は、女性獣医師が主で、男性獣医師が少ない職場です。男性獣医師も、小さいお子さんがいる方も多いです。また、動物看護師さんも女性が多くて、入籍したばかりの人や小さいお子さんがいらっしゃる方もいます。
私の動物病院の勤務体制について
獣医師の勤務体制は、
・シフト上での勤務時間は10:00~19:00 (朝の入院管理担当の獣医師は9:00~18:00)
・ただし、シフト上というだけで、残業は毎日30分~2時間程度(2時間程度になるのは、ほとんどが繁忙期のみ)
・残業はあるが、タイムカード制で、1分単位で残業代支給
・昼休みは1時間設定だが、実際はしっかり休憩できる場合もあれば、お昼ごはんを食べて終わり、という場合もある
・週休2日制、曜日固定(シフトの調整もあるが、できるだけ希望曜日を考慮してもらえる)
・休日出勤の強制はないが、入院管理のため任意で朝、病院に行くことがある(休日出勤として残業代は発生)
・年に5日は有給消化必須(三六協定に基づく。ただし、年末年始や夏休みが別途特別休暇としてとれるわけではないので、そこだけで有給消化ノルマは達成してしまうことがほとんど)
・それ以外に、有給申請すれば考慮してもらえる(が、予約診療のため有給締め切りがとても早い)
というものです。
動物看護師の勤務体制も似てはいますが、看護師の場合、基本残業はなし、昼休みはきっちり1時間とれる。有給申請の締め切りも余裕がある、という点で、獣医師より働きやすい環境にあります。
今の病院での働き方のメリット、デメリット
今の勤務体制下で働いて感じるメリットとデメリットを挙げてみます。
【メリット】
・しっかり残業代を出してくれるので、仕事内容もおざなりにならず、最後までしっかりとこなすことができる
・有給消化にはなるが、土日も申請すれば休みがとれる
・基本、土日は出勤だが、小さいお子さんがいらっしゃる方は、土曜日か日曜日のどちらかを公休にして調整されている方もいる
・基本は固定休だが、子供の都合や、最近でいえば新型コロナウイルス関連で急な休みが必要になっても、臨機応変に対応できる(新型コロナウイルス関連で、濃厚接触者になった時や、子供の小学校や幼稚園などが閉鎖になって、子供自宅待機になった時。特別休として、有給消化せず休みがとれるようになりました。)
・例えば妊娠中など、安静を保たないといけない時は、勤務時間は変更なくても無理のない程度に働けるよう勤務内容を変更するなど、やむを得ない場合、できる範囲でとはなるが、1時間程度の時短勤務や出勤時間の調整もできる
【デメリット】
・基本土日は出勤になるので、冠婚葬祭のたびに有給を消化する必要があり、自分のために使える有給が少ない
・残業がいつまであるかわからないので、仕事がある日に予定を入れにくい(友人と会う、等もそうですが、保育園のお迎えなどがしにくい印象でした。直前連絡で、時間延長をお願いしなければならない時もありました。)
・年末年始や夏休みも含め、長期休暇がとりにくいので、誰かと一緒に行動する予定が立てにくい
・昼休みが十分にとれず、体と頭を十分に休ませることができず、疲労がたまる
・結局は、専業主婦並みの家事育児はできないので、家庭内での協力が必要になる
以上、ざっと挙げてみましたが、「動物病院に勤務している獣医師」であれば、この程度はどこの動物病院でも同じだとも思います。しかし、この当たり前のように思われている部分もより改善していけると、より働きやすい環境になると思います。
女性獣医師が働きやすい病院とは?
女性獣医師、特に、小さいお子さんがいらっしゃる方は、突然イレギュラーな休みが入ることや、土日出勤だと保育園などがやっていない曜日が出勤になってしまい、なかなか都合が合わせられないことがあると思います。
普段から、このようなケースも想定されたうえでの働き方ができていれば、安心して働くことができると思います。
例えば、当病院でやっている、公休の曜日調整、時短勤務制度、特別休暇制度の確立、急な休みや早退になるべく対応できる体制づくりは、女性獣医師にとってとても魅力的だと思います。
さらにより働きやすくするとしたら、より柔軟な時短勤務制度(午前のみなど)の選択肢が増える、年末年始や夏休みは、特別休暇として有給消化とは別に休みが取れる、残業はなく定時で帰宅できるようにする、といった制度があったらいいと思います。
しかし、命を扱う職種ですから、きっちりと時間どおりに、とはいかないものです。
自分の技術力向上は期待せず、予防医療や軽診療に限って復職するのか、ある程度は妥協できるから、自分の技術力や診療の幅も広げつつプライベートとバランスをとって働いていきたいのか、雇われる側もまた、自分の働き方に対する意志・考えと、できる仕事内容・量を明確にしておく必要があると考えます。
■この記事には<後編>があります。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。