女性勤務医が思うコト「雇われる側も自分の立場を明確に」
女性獣医師の本音トーク その24 Part2(①働く現場の生の声+②院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
女性が多く働く動物病院で勤務しているからこそ言える、長く現場で活躍するために必要なこと <後編>
【編集部:注】
この後編(Part2)では、復職するにあたって大切なことはなにか、語っていただきました。臨床業界への復職を考えている女性に是非とも読んでいただきたい内容となっております。
私の働いている動物病院は、女性獣医師が主で、男性獣医師が少ない職場です。男性獣医師も、小さいお子さんがいる方も多いです。また、動物看護師さんも女性が多くて、入籍したばかりの人や小さいお子さんがいらっしゃる方もいます。
雇われる側も自分の立場を明確にすることが大事
自分の意志や考えと、できる仕事内容や量を明確化しておくことが大事、というのは、
雇用する側にとって、
・どの程度仕事を振ればいいかわかりやすい
・イレギュラーなことも予測できれば対応をあらかじめ考えておくことができる
・他の勤務スタッフもどのように接していけばいいかわかりやすい
といったメリットがあります。
そうすれば、雇用される側も気まずい雰囲気になることも少なく、自分の納得のいく仕事をこなすことができると思います。
とはいっても、子育てなどで長い間臨床から離れていると、しっかり診療業務をこなし獣医師としても成長していきたいと本当は思っていても、そのブランクがネックになってあまり一歩を踏み出せないこともあると思います。
しかし、傍から見るとそれは、自分の中で勝手に壁を作っているようにも感じます。
要は、キャリアは人それぞれで差があって当たり前ですし、ブランクのない若い獣医師の方が自分より診られるということもザラだと思いますが、いかにそこを乗り越えていけるか次第なのではないか、と思うのです。
私の病院でも実際に、40代になってから復職された方がいらっしゃいました。そしてその方は、院長が牛耳っている個人病院で院長の下で働いていただけなので、診察は出てもワクチン程度、あとは看護師業務に毛が生えたような業務内容だったそうです。
しかし、その方のすごいところは、そこに引け目を感じることなく、まるで新卒のように色々と教わろうとする姿勢でした。
確かにはじめのうちは、どこまでできるのかお互い探り探りではありましたが、1年も経たないうちに、いまではもう立派に診療は1人でこなし、手術もできるようになり、大事な戦力として活躍しています。
まとめ:女性獣医師が長く現場で活躍するために必要なこと
どこも人材不足の今、雇用する側もされる側もおたがいに歩み寄ることが大事だと思います。
幸いにも、私の勤務先では、女性や子持ちの獣医師が多いので、急な休みや土日に休まざるを得ないことに対して理解が得やすく、責めもしないし、いい雰囲気で働けています。雇用体制の充実とともに、各々の獣医師の家庭事情に配慮して各々が気遣いあえる職場環境が求められています。
しかし、その職場環境に甘んじることなく、雇用される女性獣医師も、自分のできる範囲で精進していく姿勢をみせることが大事です。休むのが当たり前、ではなく、感謝をきちんと相手に伝えること。勤務時間内では最高のパフォーマンスを出すこと。キャリアのロスを引け目に感じず、現状をきちんと把握・受け入れて変に意地を張らないことが大事なのかもしれません。
どんな獣医師であれ、前向きに、笑顔で、真摯に仕事に向き合う人に対しては、周りも嫌な顔はしないと思います。いつからでも、スタートは切れるものです。
このように、お互いがお互いを理解し、歩み寄ることができれば、女性獣医師も長く勤務することができ、動物病院の人材不足の解消にもつながっていくと思います。
【追記 コンサル西川からの匿名女性勤務医への質問】
コンサル西川:女性が多く働く動物病院に勤務すると、人間関係が難しくなるといった話を伺うことがあります。匿名先生の病院も女性が多い病院だと思いますが、人間関係を良好にするために何か工夫はされておられますか。
匿名女性勤務医:各人がやっていることに他の人はあまり関わり合いを持たないようにしていることです。また、雑談などでコミュニケーションをとるようにはしています。
ただ、仕事ができる、できないはありますし、患者さんが来ているのに動く、動かないはあって、陰口や文句を言う人もいます。しかしそれもその時だけで、そういう人間関係が嫌な人は辞めています。
コンサル西川:いじめる人や文句を言う人は自分から辞めていく感じになっているということでしょうか。
匿名女性勤務医:そうです。また、パワハラやセクハラがあれば、匿名での報告ではありますが、病院側はその報告した個人が誰であるかはわかっているような仕組みもありますから、女性への配慮はしっかりとなされていると感じています。
コンサル西川:これは今の時代ゆえの対応ですね。
また、新人を育てるための制度はありますか。
匿名女性獣医師:1年目の終わりにはオペが独り立ちできるようにすることが目標になっています。
出来る獣医師を増やすことで、来院数をどんどん増やして、分院を増やす方向で考えていますので、新人から育成して、現場に出して、ポジションも与えていく形です。
勤務医が多く居る病院では、先輩たちが症例をやってしまって、新人には回ってこないといった話を聞きますが、逆にどんどん任せていかないと、病院の未来が見えて来ないのではないかと私は考えています。
※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。