男性・独身女性獣医師にわかってほしい~育児・家事のこと~
女性獣医師の本音トーク その26 Part1(女性院長から男性・独身女性獣医師へのメッセージ)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
獣医師として働きながら悩んだこと 〜男性獣医師や独身女性獣医師にわかってほしい、育児・家事のこと 前編~
≪ 子どもが保育園のころ ≫
子どもが保育園に通っているときには、朝起きてから急な体調不良が起こることが多く、病院への連絡で困ることが多かったです。
登園させてそのまま出勤することが殆どでしたが、園内で伝染病が流行すると登園させてもすぐに帰宅させられることが多く、本当に困りました。子どもを預ける人は急に見つかるわけがなく、病院に連絡しても良い返事をされることはもちろんない。
子どもを1人で留守番させるか、自分が病院を休むか。その2択しかない状況でした。
たとえ無事保育園に預けることができても、途中で発熱すると迎えに来てくださいと勤務先の病院に連絡が入ります。携帯がなかった時代に子育てをしていましたので、緊急連絡は勤務先にかかります。
勤務獣医師が多ければ事情を話して帰ることもできるかもしれません。しかし、子どものことで度々休むと「また?」と言われますし、子どもの人数が増えると急に休む回数も増えます。急な休み明けに行くと空気感が違い、「昨日、忙しかったんですよね。緊急オペもあったし」と言われると、だんだん休むことに罪の意識を持つようになりました。
保育園には迎えの時間が決められていますので、その時間に間に合うように迎えに行かないと保育士さんたちに迷惑が掛かります。夕方、検査に時間がかかる症例や、救急症例、緊急オペなどがあると、放り出して子どもを迎えに行くことができません。そのようなことが何回もありました。
そのたびに保育園に謝罪していましたが、そのうち「誰か確実に迎えに来れる人を探してください」と言われるようになりました。夜間保育園などを当たりましたが、親もしくは身内の誰かが連れていくことが条件で、犯罪に巻き込まれないようにという理由でしたが、連れて行ってくれる誰かが見つかりませんでした。
じゃあ、獣医師として動物病院に勤務するのはパートであっても、子どもがいる限りは子どもの急変にも動物の急変にも対応できない。他の仕事でもやはり条件は同じ。動物病院ではなくても、仕事をしていくうえで急な欠勤は全く歓迎されません。
悩みに悩み、子どもがある程度大きくなるまでは子どもを中心に生活して、子どもと職場と自分自身が一番良い環境で生活できることを選ぶことにしました。
残念ながら25年前の動物病院で子育てや妊娠に対して寛大で、理解のある病院は皆無でした。しかし、子どもは小さければ小さいほど保育料は高く収入は必要でしたので、子育てに理解のある職場を探しました。
やっと見つけた職場の面接では、子育ての状況を説明し、急に休むことがあるが大丈夫かを確認しました。「子育てはみんな経験することだし、私たちもそうやって育ててもらったのだから、問題ないですよ」と言われました。
初めてのことで戸惑いました。動物病院の勤務状況と全く違い、子育てに対して後ろめたい思いをしなくてもよいことにホッとしました。
この職場を経験して、自分自身もいつか開業するときには何らかの理由で休む時には罪の意識を持たなくてもよいようにし、「休みたい」と言えるようなコミュニケーションをスタッフと取れるようにしようと思いました。
≪ 通院 ≫
交通の便が良い都会では考えにくいかもしれないが、地方は車社会です。家族1人が1台の車を持っていることが常識に近いと思います。その代わり電車やバスは1時間に1本、もしくは2時間に1本しか走りません。
このような交通事情で子どもが小さいころ大変だったのは通院です。
連れて行かないといけないのはわかっているが、獣医師の仕事は8時30分ごろから19時や20時が普通です。昼休みと呼ばれる時間がありますが、オペ・処置時間なので結局休み時間ではありません。この時間帯で仕事をしていると子どもの体調不良で通院することが殆どできませんでした。
診察の間隔があくたびに親である私が医師に叱られる。言われていることはよくわかるのですが、医師が指定してくる時間帯は私も診察時間帯で、私にも患者さんがいる。
そのことを話したときに、「あなた母親でしょ?」と言われました。
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※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。