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ママ獣医師の復職を阻む5つのハードルとは?

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女性獣医師の本音トーク その33 Part1(①働く現場の生の声+⑤復職への道)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

ママ獣医師の復職を阻む5つのハードル

○匿名女性獣医師

 

 小動物臨床現場において、獣医師不足が深刻な問題となっているようです。

 特に女性獣医師は、男性獣医師とほぼ同じ数が新卒で小動物臨床に就職するものの、多くは若いうちに臨床現場を離れ、ほとんどが臨床現場に復職しません。若いうちに臨床現場を離れる理由は結婚や出産などのライフステージを考えてのこともあると思いますが、一般的な企業であれば、子育てをしながら正社員としてキャリアを継続する、途中で退職しても子育てが落ち着いてから復職をする女性が多いイメージです。

 また、同じ臨床であっても農業共済組合などが運営する家畜診療所に勤める女性獣医師の多くは、結婚や出産後も正社員としてキャリアを継続しています。一方、小動物臨床において、キャリアを継続しながら子育てをしている女性獣医師は、他業種と比べてかなり少ないのが現実です。この差はどこから来るのでしょうか。

 また、小動物臨床はスキルさえあれば就職先は動物病院の数だけあるので、家族の都合に合わせて引っ越したとしても仕事に就きやすく、臨床を離れた女性獣医師の中には復職したいと考えている方もいると思います。

 にもかかわらず、復職する女性獣医師が少ないのはどうしてでしょうか。

 ここでは、子育て中、および子育てが一段落した「ママ獣医師」の復職を阻む5つのハードルを挙げ、女性獣医師が復職するにはどうすればいいのかを考えたいと思います。

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①時間が合わない

 一般的な動物病院の診療時間は9〜12時と16〜19時の2部制で、それに対応するために獣医師の勤務時間は8時半から早くて19時半までです。

 一方、保育園に子供を預けられるのは7〜18時、子供が小学生であっても1人で留守番できるまでは放課後に学童保育を利用しますが、学童保育の利用時間も最長で18時までです。延長保育を利用したり、シッターなどのサービス、祖父母のサポートなどがあったとしても、基本的には子供を育てるのは親の仕事なので、多くのママは子供を寝かせる時間、子供と過ごす時間を考え、遅くとも19時までには家に帰りたいと思っています。

 

 近年、男性の育児参加が謳われ、かなりイクメンと呼ばれるパパが増えていますが、女性とは違い、男性の労働時間が育児を理由に見直されることはまだ少ないため、結局はママが早く家に帰るほかないのが現状だと思います。

 

 要するに、動物病院の就労時間とママが働ける時間が合わないのです。

 これが、終業時間が17〜18時までの一般企業や大動物の診療所との、最も大きな違いだと思います。

 

②土日に働けない

 土日は保育園や学校がお休みで、多くのママ獣医師は子供の預け先がなく働けません。

 夫が土日休みであれば働きに行くことは可能ですが、子供が小さいうちは休日こそ家族で過ごしたいと思い、なるべく土日は空けておきたい方も多いのではないでしょうか。

 

 一方、動物病院にとっては来院数が多い土日こそ人手が欲しく、土日のどちらかは勤務することが必須条件になっている病院もあります。また、必須条件でなくとも臨床現場にいた経験から土日が忙しいことを知っているママ獣医師が、土日に働けない(働きたくない)ことに引け目を感じ、復職できずにいるパターンも多いかもしれません。

 

③年相応のスキルがない

 よく臨床獣医師はスキルさえあればどこでも働けると言いますが、逆を言うと、スキルがなければ働けません。

 時間的制約が多いママ獣医師が臨床現場である程度自由に働くにはスキルが必要だと思いますが、自分のスキルに自信がない場合、復職へのハードルは非常に高いと思います。

 

 私のように若い頃に数年臨床現場にいたものの、早くに他業種に転職した女性獣医師の中には、年相応のスキルが身に付いておらず、役立たずの自分を、自分にとって都合のいい条件で雇うような動物病院はないと考え、復職できない方もいるのではないでしょうか。

 

④同僚に迷惑をかける存在になりたくない

 ママ獣医師は、子供の急な体調不良や学校行事などで休みを取ることがあります。

 若い頃にそういったママ獣医師のフォローをして、正直迷惑に思っていた経験がある女性獣医師は多いのではないでしょうか。

 そして、この経験から、同じママという立場になった自分が臨床現場に復職した時、同僚に迷惑がられることが容易に想像できます。負の感情をぶつけられるストレスを抱えてまで働きたくないと思い、復職できずにいる方もいると思います。

 

⑤パートではなく正社員として働きたい

 時間的制約や土日に働けないママ獣医師が臨床現場に復職したとしても、その多くはパート獣医師になると思います。

 例えばですが、9〜17時の8時間勤務をしたとしても、フルタイムの定時が9〜19時の動物病院ではパート扱いになり、正社員と同じ待遇は受けられません。

 同じ勤務時間で正社員として働くことができる企業が他にある場合、やはり正社員としての待遇に魅力を感じ、臨床現場ではなく一般企業や公務員に流れる方が多いのではないでしょうか。

 

 

 

■この記事には<後編>があります。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。