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獣医師が臨床を離れる7つの理由

女性獣医師,復職,動物病院,退職理由,長時間労働,低賃金

女性獣医師の本音トーク その34 Part1(①働く現場の生の声+⑤復職への道)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

女性獣医師が臨床を離れる7つの理由と就職活動の反省点 前編

○匿名女性獣医師

 獣医師不足が深刻化している小動物臨床現場において、特に女性獣医師が若いうちに臨床現場を離れてしまうことが問題となっています。それぞれ事情があると思いますが、退職を希望する際に、院長先生に本当の理由を伝える獣医師は少ないのではないでしょうか。
 そこで、ここでは私の経験を踏まえて、女性獣医師が若いうちに臨床現場を離れてしまう7つの理由と、新卒での就職活動の反省点をお話させていただきます。
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①長時間労働と休みにくさ

 私が臨床現場から離れたいと思った1番の理由は、長時間労働と休みのなさです。

 

 毎日8時から22時過ぎまでほぼ休憩なしで働き、時には夜中の3時まで病院に残って仕事をしていました。週休2日とはいえ、1日は勉強に費やしていたので、休みとは言えませんでした。同僚が「職場に迷惑をかけるから」と葬儀や結婚式を欠席し続けているのを見て、このままでは人間として大切な何かを失ってしまうと思いました。

 

 「若い頃はプライベートよりも獣医師としての成長を重視するべき!」とおっしゃる先生もいますし、その言葉自体を否定するわけではありませんが、プライベートを蔑ろにされすぎる労働条件では、長く働き続けられない獣医師もいます。

 

 私の周りで臨床を離れた女性獣医師たちにも理由を聞いてみたのですが、やはりほとんどが「自分の時間がなさすぎた」と答えていました。

 

②貧乏暇なしを地でいく低賃金

 2つ目の理由は、労働時間に対して賃金が安すぎることです。

 

 前述の通り、1日平均14時間働いていましたが、残業代が払われることはなく、月の給料は25万円で、厚生年金と健康保険はありませんでした。ボーナスも年に2回、0.5〜1ヶ月分で、年収にすると400万円に満たず、時給に換算した時は悲しくなりました。

 

 なかには、「新卒の獣医師は病院に利益を生んでいるわけではなく、成長させてもらっている立場。お世話になっている病院に対して、どんな恩返しができるかを考えるべき!」「お金ではなく経験をもらっていると思え」とおっしゃる先生もいますが、あくまで勤務獣医師は給料で雇われている身。労働時間に即した賃金を支払わないと遅かれ早かれ退職するのは当然のことと思います。

 

③ハラスメントが横行する職場環境

 3つ目の理由はハラスメントです。

 

 動物病院は比較的、パワハラ、セクハラに対する意識の低い職場です。実習に来た若い動物看護師や女性獣医師に「彼氏はいるの?」と聞くのは当たり前で、仕事中にプライベートを根掘り葉掘り聞かれるのもしばしば。アットホームな職場と言われればそうなのかもしれませんが、耐えられない人もいると思います。

 また、忙しさゆえの余裕のなさからか、同僚、後輩に高圧的な態度をとるスタッフも多く、パワハラが横行しがちです。

 

 自分が院長になれば自分好みのスタッフを雇い、自分にとって快適な人間関係が築けるのかもしれませんが、開業するまでの気がない獣医師は、臨床現場にいる限り一生この問題と戦わなければならず、嫌になる人も多いのではないでしょうか。

 

④狭い世界での窮屈な人間関係

 動物病院の多くは、社員数10名ほどの少人数の業態で、病院の近くに住む飼い主様を相手にしています。人によっては勤務先の病院の近くに住んでおり、かなり狭い規模で自分の生活が完結してしまいます。

 この狭い世界で自分は一生を終えるのか……と思い、他業種への転職を考える人もいると思います。

 

⑤漠然とした将来への不安

 前の項目たちとつながることですが、長時間労働×低賃金から、将来への不安を覚える人も多いと思います。

 

 収入は長く続けていれば上がるかもしれませんが、労働時間については劇的に改善されるものではないと思います。

 例えば、私の勤めていた動物病院では、院長は毎日23時過ぎまで病院に残っていましたし、先輩獣医師で病院に泊まっている人もいました。また、双方とも休みはほぼなく、院長が家族旅行で不在の日もスタッフがたびたび相談の電話を入れていました。

 一生、プライベートのなさそうな労働環境に、将来に夢が見られなくなりました。

 

 

 

■この記事には<後編>があります。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。