貴方が抱える復職の「怖さ」は何ですか~求められる女性獣医師~
女性獣医師の本音トーク その35 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
臨床現場に戻る「怖さ」について考える ~実は臨床現場は40代・50代の獣医師を求めている <前編> ~
○匿名女性獣医師
怖さは技術・知識ではなく、人間関係にある
女性臨床獣医師が、出産や育児などの理由で一度臨床を離れた後、「臨床現場に戻るのが怖い」と言って公務員など別の職業に転職したり、専業主婦になったりするケースは非常に多いです。
本当は臨床が好きだという考えがあって、せっかく獣医師資格を取ったのにもったいないという気持ちを抱えつつも、臨床現場に戻れないという心境の背景には、第一に命を預かる責任への不安があります。これは技術や知識の衰えへの不安によるものですが、この点については院長や同僚に相談することで乗り越えられる可能性が高いですし、雇用主側も体制を整えている事が少なくないと思われます。
ただ、女性獣医師が復職にあたって感じる怖さは、どちらかと言うと技術や知識面よりも、むしろ人間関係の面にあると言えます。
例えば、産休・育休で休職した場合、自分が休むことで周囲に多大な迷惑をかけたという負い目を抱えることになります。
最近では、産休・育休への理解のある動物病院も多いと聞きますし、雇用主側は快く休みに入らせているかもしれません。それでも、私達は勝手に裏を読み「やはり迷惑がられているのではないか。」と想像して怖くなってしまうのです。
なぜなら、たとえ自分の職場がどうであろうと、女性はそれ以前の教育や体験の中で、日本社会全体に根強く残る「産休・育休は迷惑なもの」という風潮を強く感じて生きてきています。
ですので、自分の番になった時、どうしても引け目を感じてしまうのです。
思い込みから声を上げずに諦めている
こうした不安は、院長や同僚、周囲の獣医師たちとコミュニケーションを取ることで多少薄れることもありますので、休職中でも職場に顔を出す、セミナーや勉強会に参加し続ける、そういったことが解決策のひとつのように思えます。
しかし、子育て中はそれどころではない場合も多いですし、勉強会に参加した時に話についていけなくなって、段々と足が遠のいてしまうケースもあるため、誰にでも適用できる方法ではないように思います。
また、子育てをしながら勤務する不安として、子供の急な体調不調などでの早退や欠勤が挙げられます。この点も、言えばすぐに融通をきかせてくれる病院もあると思いますが、本人としては、休職で大きな迷惑をかけたのに、その後もたびたび迷惑をかけるわけにはいかないと思ってしまい、家庭と仕事の板挟みになる状況を想定し、恐怖を感じてしまいます。
さらに、年齢ばかり上がっているのにわからないことだらけだという劣等感から臨床に戻るのが怖いと感じることもありますし、そもそも、ブランクのある獣医師を良い待遇で雇用してくれる動物病院などないと思い込み、再就職先として積極的に動物病院を探さない女性獣医師もいると思います。
こうして、一度臨床現場を離れた女性獣医師は、臨床以外の仕事に転職したり、専業主婦になったりすることが多いのですが、根本として、前述の通り、社会の風潮を感じ取って勝手に引け目を感じ、声をあげずに諦めてしまっているという面もあるため、動物病院側だけの問題ではないとも思えます。
女性獣医師側にも、自分たちはこのような人間関係での怖さを抱えているということを積極的に言葉にして周囲に伝え、サポートを求める姿勢が必要なのかもしれません。
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※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。