1. トップページ > 
  2. 転職役立ちコラム > 
  3. 勤務環境がスタッフに優しくなる=心の余裕につながる

勤務環境がスタッフに優しくなる=心の余裕につながる

女性獣医師,復職,動物病院,給与,非常勤,パーソナルスペース

女性獣医師の本音トーク その38 Part3(①働く現場の生の声+②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

《シリーズ企画 臨床現場復帰までの軌跡 その4》~N女性獣医師のコーチングを活かしたリアルルポ 後編~

【編集部:注】


前編・中編とお届けしてきた「臨床現場復帰までの軌跡 その4」ですが、今回の後編が最後となります。前回に引き続きE女性獣医師が院長先生へ伝えたいこと、そしてこれからの展開をどのように考えているのか貴重なお話を伺うことができました。


※今回の記事は、前・中・後編の3つに分かれています。


■<前編>の記事はこちら


■<中編>の記事はこちら

 
【ケース 4】 E女性獣医師(40代・国立大学出身)

 新卒から3年間獣医師2〜3名規模の動物病院で勤務し、結婚して退職。→引っ越しして、非常勤で他の動物病院で勤めて子供ができたので、そこもやめた。
 転居先の愛知県にて、子供が2歳の時にそこでもう一度非常勤となり、週2で働く(1年)
 2次診療の動物病院で2年非常勤→元の職場へ戻る
 2人目が生まれたあと、1年半ほど主婦をして、そのあとから働き始める(非常勤週3日)
女性獣医師,復職,動物病院,給与,非常勤,パーソナルスペース

【院長先生へ(続き)】

Q:やはり、給与でモチベーションが変わってきますよね。

 

 「給与を低くされると、勉強する気持ちになれません。給与がある方が、やる気になります。

 業界として、院長先生の意識が上がらないと変わらないのでは、と思います。

 感じるのは、院長が、使いやすくて使える人にはいてほしいと思っている?使えないならいらない?と思うのです。

 

 女性獣医師を育てる余裕がなく、育たない人はいらない。雇用する側からはわかりますが、育つような余裕を持って動物病院をつくってほしいです。

 友人たちの話を聞いても、やっぱり給与があると公務員は長く続けていますよね。40代で、年収600万円くらいになるはずです。これが、基準になると思います。」

 

【非常勤の理由】

Q:先生の今までのお話をお聞きすると、非常勤の期間が長いですが、その理由はありますか?

 

 「常勤は、時間によりますが、無理だと思います。週5回、8:00〜18:00で勤務するのは無理じゃないかと思います。

 未満児で非常勤だと保育園に入れないので、小さい時は母にお願いして非常勤をしていました。」

 

 

Q:給与面で、たとえば時給2,000円だったら、他の病院へ転職しますか?

 

 「1時間2.000円になっても40万円違うことになります。今の病院では人間関係や距離感に満足しているので、これだけの収入が変わることで人間関係が変わると考えると、職場は変えないです。

 最近は女性で独身の方や、中には心と体が鋼のような方もいて、そういう方だけずっと淡々と働けることができます。40歳を超えて普通に働ける方には、そういう方がいて、その方を基準に考えられてしまうと、多くの女性が『長く続けられる仕事ではないな』と感じ、フェードアウトすることになりますし、実際そうなっているような気がします。

 もちろん、それでも働き続けられるように、女性側も図太くなる、弱い人は気持ちを強く持つ必要があると思います。」

 

【これからの展開を考える】

Q:ありがとうございました。これからの展開について、考えていることはありますか?

 

 「今の病院では院長が50歳、手術は院長がやっているので、病院が今後どうなっていくのかな?と思っています。

 私自身も再就職するには、もう40代でスキルなしでは見つからないので、認定医をいくつかとりたいと思っています。皮膚病学会、腎泌尿器学会の認定医などを検討しています。」

 

Q:がんばってください!

 

【まとめ】女性が働くには、1つ目は「家族の協力が必要」、2つ目には、「病院側がパーソナルスペースを確保すること」

 先生のお話をお聞きして特徴的だったのが、「トイレや病院内でのパーソナルスペース」の大切さでした。

 狭い病院だと、居場所に困るというか、人が居ない場所を探すことがあります。思えば、こうして女性獣医師のご意見をいただくことで、全国の動物病院の勤務環境がスタッフに優しくなることが、みんなの心の余裕につながるのではないか、と思いました。

 そして、女性の専門のスキルを持って働き続けようとしていただいていることがとても嬉しく思いました!

 

 

 

【追記  コンサル西川からのN獣医師への質問】

コンサル西川:このE獣医師のように、結婚を機にして臨床医を辞める女性が多いのは、家事負担が予想よりも大きいからなのでしょうか。

 

N獣医師:一般企業でも「寿退社」という言葉がありますが、結婚を機に一旦は辞めて、家庭に入って、その後の状況を見て、また働くかどうかを決めたいということではないでしょうか。

 「新卒後の就職では、まず3年は頑張る」という暗黙の意識があるので、3年したその頃には、丁度、結婚を意識する年齢になってしまう。30歳を過ぎると、婚期を逃してしまうこともありうるので。

 つまりは、3年くらい勤務することが獣医師として一人前としてみてくれる時期であり、結婚も意識する年齢なので、人生の一区切りを付けたくなる気持ちになるからかもしれません。

 

コンサル西川:「とりあえず、3年間はどんなことがあっても頑張る」は、獣医師に限らず、一般サラリーマンでも同じです。

 3年でまずは一区切り付けて、転職を考える。その機を逃してしまうと、あっという間に30歳を過ぎて、転職時期を逃してしまって、不満があってもその会社に残ることになってしまう。

 

N獣医師:求人票などにも「経験3年以上」とか書いているので、この3年が一区切りなのでしょう。

 この言葉が潜在意識に刷り込まれているので、まずは3年頑張ってみて一区切り付けたい時期と30歳を前にして結婚を意識する時期とが重なってしまうことで、結果として、結婚することが引き金となって辞めてしまうことになるのではないかと思います。

女性獣医師,復職,動物病院,給与,非常勤,パーソナルスペース

 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。