女性だって働き続けたい!女性の心身を労わる職場づくり
女性獣医師の本音トーク その10 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオ が独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
「女性だって働き続けたい!女性の心身を労わる職場づくり」のヒント <前編> 〜生理休暇取得について〜
【編集部・注】
これは、女性獣医師が働きやすい労働環境をつくるための施策として、女性が求めている「生理休暇」についての記事です。
生理休暇は会社や公務員でも制度があってもとりにくいとされていますが、動物病院ではいかに取り入れていけばいいのか、N女性獣医師の提言です。
また<後編>では、生理休暇について42人に調査を頂きました。
女性の本音のひとつに、どんなに院長や職場の体制が整っていても、どうにもならないことがある。多くの女性が悩んでいることでもある。共通しているのは、結婚、出産、生理痛、更年期を通して働き続けるのが困難な状況が起こってくる。
女性獣医師が、40代で離職することが多いそうだ。その理由として、女性の体のことがあるようだ。今回は、女性獣医師がとても切り出しづらい生理休暇のことについて考えてみたい。
女性のほとんどが、40代後半まで毎月生理がある。さらに、症状が重い人だと、生理の他の排卵期にも腹痛がある。これは、男性にはわかることは不可能なとても不便な部分だ。しかし、このことがあるから、子供が生まれて豊かな家庭ができるのだ。ちなみに、月経痛がひどいのは人間だけだろう。江戸時代は、そんなにひどくなかったそうだ。現代人がいかにストレスや食べ物が悪くなってきているかわかる。実は男性も食べ物や電磁波などで正常な精子数が減ってきているそうだ。獣医師なら学んでいるはずのリピートブリーディングが、そのまま不妊症と考えられる部分が多くある。
月経は生理現象だが、痛みが起きるということは、つまり炎症が起きているのだ。ホルモンバランスが崩れ、無排卵月経が起きると、悪循環に入る。食べ物の種類、栄養バランス、夜の寝る時間など女性は本来の体のリズムを大切にしなければいけないのだ。子供を産まなくても、体がそうできているのだから、よりよく生きるのには、体を大切にすることが一番大事なのだと思う。しかし、残念ながら、女性がそうできない現実がある。
女性と男性は、体のつくりも、考え方も違う。つくりが違うから、考え方も違うのだが、だからこそ相互理解の姿勢に意味があると思うのだが、これが実践されているのかというと、多くの職場では十分ではないようだ。実際に女性獣医師は、男性には体の不調を理解してもらえないと思い言い出せく、結局職場を去ることが多い。それはそうだ。男性には、女性の体のことは理解できない。院長が男性で奥さんが女性なら、どうだろう。奥さんの方が上手に主張するからだ。しかし、雇用された女性獣医師は同じようにはいっていないようである。それは女性獣医師が院長の場合でも、雇用という点では同じ問題で、女性を雇用する以上は考慮する価値がある部分で、コミュニケーションが非常に関わってくるデリケートな部分である。
生理休暇が取得しづらいと感じている女性獣医師は多い
今日は、女性の体について考えてみようと思う。
月に一度、個人差はあるが、大体4〜5日程度、月経がくる。腹痛や貧血など人によって症状も個性があるが、楽ではないし、症状がきつい人だと、仕事ができないくらいのケースもある。本当にひどくなると、月経期間からずっと具合が悪く、一月のうち、元気な日が5日間くらい、と言う女性もいる。これは個人差があり、正解はないというか、自己申請であり、この点で職場の理解が必要である。
乳がんや子宮筋腫、その他女性系の腫瘍の原因はストレスだと言われるが特にこの月経時の症状の放置は、ホルモンバランスを崩し、その後も悪循環をうむことがわかっている。獣医師ならわかるだろうが、炎症反応が続き、細胞増殖時にエラーが起こりやすいということである。
体調が悪くても、女性獣医師はなんとかなんとか迷惑をかけずに現場についていこうと思ってしまうものだ。新卒で動物病院でのスタートは、男性獣医師と同じなはずだ。しかし、職場のストレスが女性の場合は、月経症状に出るのだ。体は、働くよりも、子供を産んで癒し、育てる方向にできているのだ。それを、無理に男性に合わせるような業界の設定になってしまっている。男女雇用均等法とはいえ、重いものは持てないし、一般的に体力も弱い。体も華奢である。
Aさんの例
「病院メンバーは、院長と自分と院長夫人と動物看護師さん一人。奥さんはすぐに上にあがるし、自分はお給料をもらっているから、簡単に帰れない。看護師さんにも悪いし・・・鎮痛剤を飲んだりしてなんとか職場に耐えています」
また、微妙な他の女性スタッフとの関係。雇われているという自分の立場で、思い通りに振る舞えないのもネックだ。
Bさんの例
「毎月具合が悪く、風邪といって休んでいます。生理だっていいづらいので、それで有給はほとんど使ってしまいます」
これだと、余暇がないことになる。いろいろと考えると、女性は本当に不利であるように思える。月経が終わると、今度は更年期がくる。
Cさんの例
「私は毎月生理休暇を2日と排卵前後も不調で休んでいます。毎月4日程度休んでいます。
毎回当日の朝に連絡して休暇を取得しています。
こんなに休んでいたら臨床現場は務まらないと思っていますが、病院に通い、ピルや漢方を飲んでも不調が改善しません。迷惑がかかるので私のような人間は職場にいない方がいいのではとも考えています。」
こんなに困っている人もいるのだ。
実は、筆者も生理痛がひどかったので、職場の人間関係に影響があった。自分がいることが迷惑だと思っていた。コミュニケーションでどうにか出来たかと言われると、改善しない体のため、それだけの問題でもない。
では、どうしたら良くなるのだろうか?
前述したように、この問題がデリケートなのは、個人によって月経時の症状に違いがあるからだ。
月経痛がほとんどない人もいる。BさんやCさんのように、ひどくて働けない女性獣医師もいる。職場に、全く問題がない女性獣医師と、症状のひどいCさんのような獣医師がいたら、C獣医師は、劣等感や罪悪感に苛まれるだろう。
人は自分の経験からしか、理解をすることができないので、わかる努力をすることが大切だ。
しかし、今回聞き取りをしてわかったのは、この問題はとても大きいようだ。
もし、女性獣医師に安心して長く働いてもらいたいのなら、「生理休暇をとりやすくする」必要が絶対にある。
労働基準法でも定められているが生理休暇の請求率はとても低い
では、生理休暇とは、どうなっているのだろうか?
「生理休暇は取りづらい」
生理休暇が取れる職場でも、こんな意見もある。
「男性ばかりの職場なうえ、休みを申請するシステムで休暇理由がみられるのでとても恥ずかしいです。休みの連絡を入れる時も「生理休暇でお願いします」と電話口で言うのも男性相手です…
私は有給休暇に余裕がないので生理休暇を使わざるを得なくて、恥ずかしさを我慢して利用してます。こういったわけもあって取得する人が少ないのかなと思っています。
単に休まずに頑張っている方が多いのかもしれませんが…」というDさん。
「生理休暇について」労働基準法でどう定められているかを確認してみた。
第68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
第68条は、女性が現実に生理日の就業が著しく困難な状態である場合に休暇の請求があったときはその者を就業させてはならないこととしたものであり、生理であることのみをもって休暇を請求することを認めたものではない。休暇の請求は必ずしも暦日単位で行う必要はなく、時間単位で行ってもよい(昭和61年3月20日基発151号、婦発69号)。雇用形態は問わないので、正規雇用・非正規雇用を問わず女性労働者であれば誰でも請求できる。など
第68条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する(第120条)。
女性にとって助かることが決められているのだが、一般的な企業に生理休暇があるか?というと・・・
厚生労働省「平成27年度雇用均等基本調査」の結果概要によれば、生理休暇中の賃金を「有給」とする事業所の割合は25.5%(平成19年度同調査では42.8%)で、そのうち70.6%(同70.0%)が「全期間100%支給」としている。また、女性労働者がいる事業所のうち、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間に生理休暇の請求者がいた事業所の割合は2.2%(同5.4%)であった。女性労働者のうち、生理休暇を請求した者の割合は0.9%であった。長期的には有給とする事業所の割合、請求した者の割合とも、低下傾向にある。
厚生労働省雇用機会均等課は、「職場には生理のことは伝えず、年次有給休暇を使って休んでいるかもしれない。人手不足の企業では、休みたくても休めない女性もいるかもしれない」と話す。
ここまで(Wikipediaより引用)
もちろん、今どき「生理休暇」を知らない院長などいないだろう。しかし、女性獣医師が言いづらいのは、上記の取得状況を見れば一目瞭然である。生理休暇や更年期の体調不良が原因だとすれば、体調良好に過ごしてもらえる日に頑張ってもらい、そして健康を維持し、居やすい職場にしなければならないのだ。
休みやすいと思われる女性院長の病院では、こんなことも。
「当院のスタッフも、生理のたびに調子の悪い人が何人かいて、よく休んだり、早退欠勤してますが、同じ女性でも個人差もあることですし、理解/共感も人それぞれです。」
誰かが休めば、他の誰かに皺寄せがくる。
そして、女性獣医師も、もっともっと動物を助けたい情熱があるのだ。
だからこそ、常に感謝の気持ちは持っているようにしたい。
労働基準法で守られているということをまず本人と職場がしっかりと理解すること。そこから始めるのが良いのではないだろうか。
女性獣医師が長く働き続けるため現場に求めたいこと
50歳近くになる筆者の同級生の女性獣医師たちは、今どうしているかをふと考えてみると、現場で活躍している獣医師もいることはいるが、その割合は非常に少ないように思う。結婚してやめたり、何かのきっかけでやめたり、途中で公務員や企業に転向したりするケースが多い。特に、動物病院の勤務は体力を使うし、相手を助ける仕事のため、心身無理をすることが多いのが実際だ。「体が最近もたないのよね」というのは必ず聞く言葉だ。気をつけたいものだ。
女性獣医師の声を聞けば聞くほど、我慢して職場にいるケースが多いようだ。職場側が「女性が長くいたい」と思えるようにならないと、女性が働き続けるのは困難な業界であることも確かである。今後職場が女性に優しくなることを望む。
【追記 コンサル・西川からのコメント】
「時短勤務」以外に女性獣医師の働きやすさとして喜ばれる方法がありますかと、ある女性院長にお聞きしたところ、「生理休暇が欲しいとの要望があります」との答えでした。その病院は「スタッフに優しい病院づくり」を進めていますが、「生理は個人差があるので、休む人と休まない人が出てくる。それでは不公平になってしまうので、導入するとなると、休まない人へのメリットを考えなければならない」と仰っていました。
一般企業でも、公務員でも、生理休暇をとっている人は少ないと言われます。制度はあってもそれが機能していない。では、女性獣医師がこれからもどんどん増えてくるこの獣医師の世界ではどうすべきなのか。女性の立場から書かれたこの記事は貴重です。
■<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。