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動物病院のリアル~給与・勤務時間・人間関係~

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女性獣医師の本音トーク その8 Part1(①働く現場の生の声)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

動物病院のリアルな現状について <前編>

匿名女性勤務医

 皆さんは動物病院にどんなイメージを持っていますか?

 

 個人の動物病院で働いたことがある人なら今回の記事を読んで「あるある」と共感される方もいらっしゃると思います。

 一方で臨床未経験の方は少し驚かれるところがあるかもしれません。

 

 

 動物病院は、個人動物病院、企業動物病院、大学病院、二次施設などいろいろな種類があります。

 

 個人の動物病院の場合、良くも悪くも院長によって全てが決まります。そのため個性的な病院が多く、中には信じられないような雇用条件などもあり、選ぶ際には注意が必要です。もちろん良い条件の病院もあります。

 

 私は2つの個人動物病院での勤務経験があるので、具体的にお話しします。

 前職を職場A、現職を職場Bとします。

 

・お給料は低い

 私は個人動物病院のためお給料は低いです。

 

 大学に6年通い私は私立大学だったため、軽く1000万を超える授業料を払っていることを考えると、とても良いお給料とは言えません。

 

 

 具体的には、職場Aでは基本給が24万円、ボーナスは夏1ヵ月分、冬2ヶ月分、昇給は年1万円という契約でした。結局ボーナスは業績によるとのことで、満額はもらえませんでした。

 福利厚生は、当時は雇用保険と労災保険のみで社会保険には入っていませんでした。

 そのため国民年金や健康保険は基本給から自分で納めに行く形でした。

 

 職場Bでは、獣医師4年目の時点で給料は25万円、ボーナスは夏1ヵ月分、冬1ヵ月分でした。現在は加入していますが、社会保険はなく職場A同様に自分で納めていました。

そのため職場Aに比べると、ボーナスが1ヵ月分下がり、休みも少なくなったため雇用条件は悪化したといえます。

 

 現在は社会保険加入済みで獣医師10年目でお給料は35万円です。他の病院に比べると低いと思います。

 

 

 お給料の面で考えると、企業動物病院や二次施設の方が良いです。企業動物病院は2社ほど見学したことがあります。結果的には選びませんでしたが、企業と言うだけあって一般的なサラリーマンのように給与や雇用条件は良いので、条件重視の方は企業動物病院の方が良いですね。

 

【編集部・注】


 国家資格である獣医師の給与があまりにも低すぎるとの声が多くの先生方から寄せられています。具体的にどれくらいの金額なのか。


 匿名先生にお願いして、手取り額・額面給与と労働時間をきちんと算出して頂きました。


 時給換算でいくらになるかは、読者の皆様がやってみてください。


 


 ●残業時間抜きで2435時間


 ●手取り340万(額面は480万)


 


 [算出方法]


 祝日休診および月6日休みでの計算になります。


 夜、病院へ入院管理に行く場合や当番などの時間は計算には含まれておりません。この時間は残業代も基本的には発生しません。


 祝日は休診日かつ有給から引かれるため、年間16日の祝日を引くと365−16=349日になります。


 349日÷7≒50週になるため、50週での月6日休みで計算をします。


 


 ・月~土曜は9:00−18:30(退勤は平均19:00)で5日間勤務します。


 10h勤務で休憩時間は0h〜最大1.5h


 10h/日×5(月〜土曜のうち5日間勤務)=50h(月~土曜1週間当たりの勤務時間)


 50週で考えると50×50=2500h


 月に2日休みがあるので、月2日×12ヶ月×10h=240h


 合計から引くと2500-240=2260hになります。


 


 ・日曜


 9:00−12:00(退勤は平均12:30)


 休み時間はなし 


 3.5h/日×50週間=175h


 


 先ほどの2260h+175h=2435h → 年間2435h(残業なしで計算)


 


 ※残業代は20:00以降から発生しますが月に数回あるかないか程度です。


 ※夜にオペが入る場合は23:00頃までのことが多いですが、月に1回あるかどうかという頻度です。

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・就活は簡単

 選ぶ病院によるかもしれませんが、比較的就職は簡単です。

 

 ニュースなどで面接を何百社も受けて…などみることがありますが、個人の動物病院の場合は募集していれば、さほど難しくありません。

 

 

 新卒の場合、スキルがないことは分かっています。そのため、研究室が基礎系・臨床系による有利などはありません。

 そのかわり、コミュニケーション能力の方が重視されます。一人で仕事をするわけではないので、院長をはじめ、周りの先輩獣医師、動物看護師とうまくやっていけるかが重要です。

 

 特に獣医学部の場合、在学中にアルバイトを全くしてこなかった方は注意が必要です。

 やはり頭が良くても職場の人や患者さんとコミュニケーションを取れなければ、臨床獣医師としては厳しいでしょう。これは中途採用でも同様です。

 

・労働時間は長い

 動物病院にもよりますが、私が勤めていた病院は2社とも9時から19時までの勤務になります。12時から16時までは病院自体は閉まっていますが、手術や処置等の時間になります。勘違いしている方が多いですが、4時間休んでいるわけではありません。

 

 病院によっては外出したり家に帰ったりしても良いそうです。

 また、夜に手術を行う場合などがあれば深夜まで仕事をするケースもあります。

 

・先輩が強い

 職場Aは体育会系の絶対先輩主義の動物病院でした。

 先輩獣医師より遅く出勤した日には、一日無視されることもありました。

 

 シフト制でしたが、先輩より先に休みの希望を出すことは許されませんでした。提出が遅れて院長に怒られることもありましたが、一度先輩より先に提出してしまった際には、いわゆる壁ドンをされて怒鳴られました。

 

 同様にベテラン動物看護師も権力を持っていたので、とにかく先輩達には嫌われないよう迷惑をかけないように業務をこなしていました。女性が多い職場になるので、気を付けなければなりません。

 

 おそらくそうやって過ごした勤務医がやがて院長になるので、厳しい動物病院が生まれるのかもしれませんね。

 

 

 

■この記事には<後編>があります。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。