女性獣医師の本音トーク　その11　part１（①働く現場の生の声＋②院長への提言）

動物病院の現状と課題　～ 他業界と比べて問題だらけなのは、獣医療以外の知識不足が原因 ～　＜前編＞

動物病院での実体験

　4年間の中で、私は2つの動物病院に勤務しました。

　初めの動物病院はとても忙しく、症例数も多かったです。

　8時勤務開始で21時、22時くらいに勤務終了。入院患者が多かったり夜に緊急オペが入ったりした際は23時を回ることもありました。

　午前の診察終了後に手術をしていた時は、昼休憩を30分取ることができれば良い方で、中には全く取れない日もありました。特に繁忙期ではその傾向が強かったですね。

　また緊急対応も受け付けていたので、昼時に緊急の子を診ることになった日は休憩を諦めていました（笑）

 　週休2日でGWやお正月休みはありませんでした。

　こうしてみると動物病院の中でもかなりハードなように感じますが、もともと早く一人前になりたいと思っていたので、あえて忙しく症例数が多い病院を選びました。

　休みの日は獣医雑誌を読んだりオンラインセミナーを聞いて勉強したりしていましたが、医療も動物も好きな私にとって勉強自体はあまり苦には感じていませんでした。

　実際多くの飼い主さんに感謝される機会も多く、精神的にも体力的にもキツい中、やりがいは十分に感じていました。

　徐々にスタッフの人数も増えていきオペ担当制度ができたことで、今まで診察が終わってからオペをしていたのが、午前中に終わらせられる日もでてきました。

　その結果、2時間ほど休憩が取れる日もできたりして、以前より早く上がれるようになりました。

　入社当初と比べて労働環境は改善してきていましたね。

　それでも、少なくとも1日12時間ほどは働いていましたが…。

　1年目の月給は手取り約20万でしたので、時給換算すると700円ほど。

　ふと悲しくなってくるので、時給換算はしない方が良いですね（笑）

　お給料は年々増えていきましたが、それでも時給1100円が良いところかもしれません。

　この病院を辞めることになった1番の理由は、苦手な上司の存在です。

　もともと3年ほどで別の病院に転職しようと思っていたことも相まって、転職することに決めました。

　2つ目の病院は、初め10時間勤務の1時間休憩でしたが、個人的な事情により途中から8時間勤務の1時間休憩という形で時短勤務にさせていただきました。

　時短と言っても、他業界の方からすると普通なのかもしれませんが…。

　初めの病院と診察スタイルが大きく異なり、慣れるまで数ヶ月かかりました。

　初めの病院は症例数も多く一件一件にあまり時間が割けなかったのに対して、ここでは一人一人の患者さんに対してじっくり時間をかけて診察できるので、その分一日に診る症例数は以前より減り、体力的にも精神的にも余裕が持てるようになりました。

　しかし、時給1500円ほどだったので初めの病院と比較すると高く感じますが、勤務時間が短くなったこともあり金銭的にはむしろ厳しくなりました。

　時間や精神的・体力的余裕を優先するか、お金を優先するか、やりがいを優先するか、この仕事はとても難しいですね…。

　相反する部分が多く、全てが完璧な病院は存在しないからです。

　※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

　この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

　これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。