育児中女性獣医師のリアルな求職事情
女性獣医師の本音トーク その12 Part1(①働く現場の生の声+②院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
育児中女性獣医師の求職事情 ~ ベストは子育てしながら自宅近くで長く勤められる病院 ~ <前編>
匿名・女性獣医師
初めまして。獣医師歴10年目、関東圏に在住しています。
現在、妊娠・出産のため休職し育児中です。
まずは、これまでの私のプロフィールを簡単に説明させていただきます。
獣医大学卒業後
①学生の頃に興味を持った屠畜の現場へ、地方公務員(食肉検査所) 2年
②愛犬が病気になり、獣医になった当初の目的を思い出し、一次動物病院代診 4年
③一次動物病院での疑問を解消するため、大学病院研修医 2年
④犬猫はインプットからアウトプットへ、そして専門性を身につけるため鳥の臨床を勉強開始
1.5次動物病院パートタイム+鳥専門病院アルバイト
当時はまだまだ働くつもりでいましたが、突然の妊娠発覚。悪阻で動けなくなり、院長先生に相談すると、退職を促されそのまま退職。コロナ禍の中、不安を抱えながらも、無事に出産し現在に至ります。
産後2ヶ月となり、妊娠・出産による体力低下も少しずつ回復し、復職を考えるようになってきました。子育てをしながら働くには、若い頃は気にもしなかった事も考える必要が出てきました。
出産後に復職を考えている女性獣医師の一例として、私の思考を参考にして頂ければ幸いです。
・勤務時間について
子供がいる状態で働くと、必然と保育施設に預ける必要性があります。
仕事内容としては小動物臨床に復帰したいですが、勤務時間の点で問題があります。
多くの動物病院では、勤務時間8:30〜19:30となっています。
一般的な保育園のお迎え時間は18:00ですが、これでは間に合いません。
延長保育を利用して20:00にお迎えをし、帰宅。それからも家事・育児は続きます。不可能ではないですが、このハードスケジュールを毎日こなすには、覚悟と体力が必要です。
勤務時間が短くなれば良いのでしょうか?
動物看護師であれば時短勤務の可能な動物病院が多いと思いますが、獣医師では時短勤務を採用している動物病院は少ないです。
獣医師の時短勤務が難しい理由も解ります。診察時間内に途中で抜けると担当できる外来に制限が出来てしまい、入院症例の申し送りなど複雑な引き継ぎが必要になり、他の獣医師の負担が多くなってしまいます。
他の獣医師に迷惑をかけてまで勤務するのは気が引けます。
それでは、時短勤務の業務内容に役割を持たせる事はどうでしょうか?
例えば、「予防・往診・軽症例(入院にならないもの)・専門性に特化する」など、業務内容に偏りは生じてしまいますが、動物病院側にもメリットがある事を提示できれば良いですね。
今まで築いたキャリアとスキルで自分が動物病院に何を提供できるのか、上手にアピールできると良さそうです。
また、フルタイムで小動物臨床に復帰するためには、パートナーまたは親の手助けがない限り現実的ではありません。
私の場合は幸運な事に、実母と同居しておりますので、この点においては問題のない状態です。
・ロールモデルが少ない
育児中の先輩獣医師が実際に周りで働いていると、自分の将来像も想像しやすくなります。
しかし、私の勤務していた動物病院では、産休育休を経て育児をしながら勤務している女性獣医師はいませんでした。
これは私の友人の話になりますが、“妊娠が発覚し、そのまま産休を取りたいと院長先生に交渉してみるも「前例がない」との理由で断られた”そうです。
現在の動物病院では、産休育休の制度を導入し、実際にその実績がある病院は少ないです。
では、産休育休取得の実績があれば良いのでしょうか?
それだけでは、まだ足りません。
50代の動物病院代診女性獣医師を見たことがないからです。
子供が0歳から小学生頃までは、手がかかるので一緒に過ごす時間が多く、中学生頃から手はかからなくなってきますが、今度は教育費がかかるようになってきます。
女性の平均出産年齢は30歳です。子育てで一番お金がかかる頃は、大学入学時の子供が18歳の時です。
「48歳女性獣医師は動物病院で需要があるのか」という事が心配になります。
子供の手がかからなくなり、フルタイムで復帰したい時期の自分の年齢で雇用先があるのかが、一番重要な問題であると考えます。
それでは、50代女性獣医師で小動物臨床を続けている方はどの様な方でしょうか?
多くは、開業されている院長先生もしくは獣医夫婦で開業されている方です。
開業すれば、好きな仕事もできて育児の時間にも融通が効くようになりますが、リスクもあります。
私の場合は旦那も獣医師ですが、夫婦共に開業希望はありません。
さらに、私は公務員の経験もありますので、公務員の方が家庭と仕事を両立している姿が容易に想像できます。
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※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。