予約制導入は獣医師の働き方改革になる!
女性獣医師の本音トーク その20 Part4(特別編 / 院長による院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
【編集部:注】
ベテリナリオでは、女性獣医師に勤務状況や給与、現役継続・復職のための条件、院長への提言などを募集していますが、女性に働きやすい病院づくりをされている現役院長が多くの院長に向けた提言をまとめて下さいました。
この記事は、ベテリナリオが院長に「女性に優しい病院とはこうあるべき」とお伝えしたい内容がズバリありますので、「女性獣医師の本音トーク」というタイトルではありますが、特別編として掲載します。
※今回の特別編は、前編(Part4)、中編(Part5)、後編(Part6)と3つに分かれています。
一動物病院開業医からみた女性獣医師がさらなる活躍をするための考察《前編》
私は地方で動物病院を開業しております。現在獣医師1名、つまり筆者である私と動物看護職に従事している者が3名、トリマー1名の構成です。今後の業務の状況如何によって、さらに優秀な人材を確保しなければならないと考えております。
開業医である以上経営者として持続的な病院運営を模索していく中で、昨今の人材確保の問題は頭を悩ませるものの1つとなっています。
とりわけ大都市圏外の規模の大きくない病院にとって、人材不足の問題は深刻であると考えられます。
しかしながら毎年1000人弱の獣医師が誕生し、そのうちのおよそ半数が臨床の現場に従事している中、実際に10年後にさらに何割かが離職し復職していない、あるいはできていない現状があります。
離職をされる原因として考えられるのは、女性ならではの事情が大きく関係していることが考えられます。
結婚を経て出産や育児といった部分は、女性にとって大きくかかわってくるライフイベントとなっています。育児に男性が参画することが求められ、積極的に子どもの学校行事に参加する男性が増えていることは事実であり、男女平等が叫ばれる中にあって喜ばしい傾向にあると思います。
とはいえ、出産を通じて産休を取得、そして育児等によってそれまでと同様の勤務時間、勤務形態で仕事を続けていくことが困難になるという声をよく耳にします。同時に、これによって臨床の現場から離れブランクが生じることとなります。
復職のタイミングはそれぞれ異なることが予想されますが、それでも日進月歩の獣医療の中で復帰した時には獣医療のスタンダードが大きく異なっている(いた)ということも容易に想像ができます。
医療の進歩自体は業界全体でとらえればよいことになるのですが、いざ復職しようとする側から見れば「これまで通り仕事ができるのだろうか?」と二の足を踏むことがあることも十分に考えられます。
復職して育児が生活の中心になった場合、学校行事や子供の急な発熱、家事に充てる時間が必然的に増加します。想定外のイベントに対峙しなければならないという様々な場面で余裕が生まれにくくなっていると考えられます。動物の診療に注力したい部分と、諸所の事情で仕事を抜けなければならない責任感に苛まれることもあることでしょう。
このように、復職しようとする女性獣医師にとってこのハードルは経営者が考えている以上に高いものであることを認識していかなくてはならない、そしてそれを双方で共有しなければならない問題であると考えます。
予約制導入は獣医師の働き方改革になる
その対策としてどのようなことを検討すべきかを考えていくことになりますが、1つのキーワードになるのが「働き方」になろうかと思います。
昨今、働き方改革が叫ばれて久しいところですが、獣医療業界は慢性的な人材不足や旧態依然とした勤務形態が続いていており、他業種と比較した際に労働環境が健全といえない部分があります。緊急性を要する状況に遭遇することや、そもそも十分な休暇が付与できていないことなど、課題はいくつか存在するのではないかと考えます。
これは女性獣医師の雇用に限ったことではありませんが、先述のような背景が存在する女性獣医師にとって、安心して獣医療に従事できる環境づくりや雇用条件が必須となるのではないでしょうか。別の見方をすれば、人材不足と叫ばれる中、活躍の場を雇用者が逸しているとも捉えられます。
フレキシブルな働き方を獣医療に取り入れていく上で、「完全予約制」が1つの解決策になるのではないかと考えています。
基本的に獣医療は「待ち」の商売といわれます。筆者も動物病院を経営していて感じるのは、時間帯によって来院数の較差が大きいことが病院としてのサービス低下にもつながるという点です。
■この記事は<中編>へと続きます。<中編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。