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完全予約制のメリットや導入した現場はどう変わったかについて

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女性獣医師の本音トーク その20 Part5(特別編 / 院長による院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

【編集部:注】


 ベテリナリオでは、女性獣医師に勤務状況や給与、現役継続・復職のための条件、院長への提言などを募集していますが、女性に働きやすい病院づくりをされている現役院長が多くの院長に向けた提言をまとめて下さいました。


 この記事は、ベテリナリオが院長に「女性に優しい病院とはこうあるべき」とお伝えしたい内容がズバリありますので、「女性獣医師の本音トーク」というタイトルではありますが、特別編として掲載します。


 前回(Part4)では出産や育児で一度現場を離れた女性獣医師が復職するにはハードルが高いという現状を語っていただきました。その対策として「完全予約制」が解決策の1つになるのでないか。


 今回はその「完全予約制」について、導入するメリットや実際に導入されている現場はどう変わったのか、お話を聞いていきます。


※今回の特別編は、前編(Part4)、中編(Part5)、後編(Part6)と3つに分かれています。


■<前編>の記事はこちら


■<後編>の記事はこちら

一動物病院開業医からみた女性獣医師がさらなる活躍をするための考察《中編》

○匿名院長

私は地方で動物病院を開業しております。現在獣医師1名、つまり筆者である私と動物看護職に従事している者が3名、トリマー1名の構成です。今後の業務の状況如何によって、さらに優秀な人材を確保しなければならないと考えております。
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 2020年からの新型コロナウイルスの世界的流行によって生活スタイルの変更を余儀なくされました。

 その結果、対面接触をできるだけ控えるために、あらゆるサービスで時間指定や事前予約を行う業態が増えました。

 

 

 私たち獣医療でも完全予約制に移行している動物病院が大幅に増加し、飼い主様もそれを認識されています。飼い主さま目線でのメリットに加え、我々に対しても診療件数のめどが立てやすくなり、1件に対して質の高いサービスが提供できる利点があります。勤務される女性獣医師にとっても、あらかじめ勤務する時間に診療枠を確保する形を採用すればよいということになります。

 

 「午後から子供の習い事に連れていく」、あるいは「家の食事の準備をしたい」ということであれば、午前中に診察業務にあたっていただく…という形であれば、復職したい女性獣医師によっても働きやすい環境に近づくことが期待できます。

 

 

 院内での診療業務以外にも病院の新たな部門として、往診を中心に活躍の場を設けるというのも一策ではないでしょうか?既存の形態にとらわれず、獣医師の勤務形態の多様性にも目を向けていく時代を迎えているものと感じます。

 

 

 

【追記  コンサル西川からの匿名院長への質問】

コンサル西川:文中に「完全予約制が1つの解決策になるのではないか」という記述がありますが、女性の働きやすさを進めておられる匿名先生の病院ではどうお考えですか。

 

匿名院長:予約制の導入については、まだ部分的導入です。

 この予約制について考える時に、すでに完全予約制をやっている病院の院長に「実際のところ、どうなんですか」とお尋ねしたことがあります。その院長からは「患者さんに浸透してしまえば、それでいけるようになる。完全予約制は予定が読めるし、患者さんにも待ち時間が長くならないし、コロナ対策にもなるのでメリットは大きいよ」とのアドバイスを頂いたのですが、私の病院では飼い主さんの年齢層が高いためなのか、「今日はやっているから、行ってみよう」と思って来院される方が私の想定を越えて多くおられます。

 漢方や鍼灸は時間枠を組んで予約でやっているのですが、今の時期のように予防ワクチンになると、年に1度しか来院されない方もいますので、完全予約制にすると、「じゃあ、いいわ」と他の病院に行く方もいると思うので、予約制は部分的に留めています。しかし、ゆくゆくは完全予約制にしていきたいと考えています。

 

コンサル西川:この予約制の課題を他の病院にもお伺いしますと、「電話予約になるので、予約を受ける人がその症状に対してどれくらいの診療時間をとればいいのかを判断する能力が求められる」ことを課題として挙げられます。

 匿名先生は、この課題についてはどうお考えですか。

 

匿名院長:その院長は、「とにかく枠をきちんと取らないことに注意」とご指摘されておられました。例えば、10分間に1予約を入れていくのではなく、30分の間で2から3の予約を入れていく形でやると、案外、うまくいくと話されていました。こうすれば、急患が来た場合にもフレキシブルに対応できるのではないかと思います。

 また、電話対応という課題も大きい。重症度は電話だけでは読み取れないことがありますので。

 

コンサル西川:この予約制では、電話予約を受け付ける方がかなりの医療知識と医療経験がなければならないことになりますので、臨床経験のある女性獣医師がパート勤務などで務めることができれば、この課題はクリアできるのではないかと考えています。

 

 

 

■この記事は<後編>へと続きます。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。