スタッフの心的負担を軽減するため予約制を導入した事例紹介
女性獣医師の本音トーク その21 Part2(特別編 / 院長による院長への提言)
そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
それは、女性獣医師の存在です。
メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
そこで、ベテリナリオ が独自に調査することにしました。
ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。
この記事は、ベテリナリオが院長に「女性に優しい病院とはこうあるべき」とお伝えしたい内容がズバリありますので、「女性獣医師の本音トーク」というタイトルではありますが、特別編として掲載します。
【編集部・注】
女性が働きやすい病院の1つの「成功事例」です。これから女性勤務医・スタッフを増やして女性に優しい病院作りを考えたい院長の参考になるものと考えて、3回シリーズで掲載しています。
前回のPart1では診療報酬の値上げや獣医師・看護スタッフの給与アップについて具体的なお話を聞かせていただきました。Part2では「ステップ2」の部分についてお話を伺います。
【連載】女性に優しい病院にするためのステップ2 〜スタッフの心的負担を軽減したいと予約制導入~
●予約制導入。コロナ対策の一環でもありますが…
動物病院の診療において、予約制を採用する病院が増えてきました。
これにはいくつかの要因があると考えられます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、三密の防止を我々が提供しなければいけない点と、飼い主様もできるだけ多くの方と接触するリスクを避ける傾向にあることが大きいと推察されます。
また、待ち時間が増加することで飼い主様からの不満につながる点も大きな理由となり得ると思います。
どの動物病院でも同様といえるのかもしれませんが、平日より土休日、午後より午前に来院件数が集中します。また診療1件にかかる時間が来院理由によって幅があることも考慮すべき部分になることでしょう。
筆者は獣医師ひとりの小規模な開業医ですので、丁寧な診察や説明を行うと1件につき30分を必要とすることも間々あります。
●高齢者来院比率の高い田舎で予約診療は普及するのか
1日を通して閑散期と繁忙期があることで業務効率にも影響が出るという側面もあり、仕事量を平準化してスタッフの心的な負担を軽減したいという課題が明確になり、予約制を導入する運びとなりました。
実はかつて15年ほど前に時間帯を区切って予約制の診療形態をとっていたことがありました。
当時は開業当初ということでそこまで来院件数が多いということがなかった点、この予約診療の立ち位置が曖昧だったこと、さらに世の中で診療に対して予約を行うことに煩雑さがあったこともあり、周知に至らないまま、一旦このような方式を中止しました。
「時代は変わったものの、当院のような高齢の方の来院比率が高い田舎で予約診療は普及するのだろうか?」という漠然とした不安がありました。
そのため、診療予約時間を細かく区切ることは極力避けるために、「時間帯予約」と呼ばれる方法を採用しました。
予約枠を30分として、その枠の中で2あるいは3件の予約を承るという形です。
例えば、予約診察時間を10:00~10:30とした場合、この間に3件の予約が入ったとします。その場合、予約された方は上記30分の中で(多くの場合は同一予約枠の飼い主さまのなかで順番に)診察を行うというイメージです。診療内容によって多少の時間の長短がありますので、その30分の中で柔軟に対応することが可能となります。
きっちり細かく枠を設定することも検討したのですが、当院に来院される方の多くが高齢者でかつ自家用車による交通手段を使用します。また当院周囲の交通事情を鑑みると、渋滞の予測が立てづらい条件にあるため、1件の診療開始が遅れた場合に次の方の診療開始に影響が及びやすくなることを考慮した結果となります。
●予約方法はLINE、電話受付は必須
予約方法について、こちらの希望としてはLINEを用いたものをメインに据えようと考えておりました。
しかしながら、やはり年齢層を考慮すると、スマートフォンに対して抵抗を持たれている高齢者比率が多いことから、電話での予約受付も併用しています。
いくつかの予約手段を設けることでSNSを使用しない方にもご利用いただきやすいとお声をいただきます。受付の確認漏れに対して細心の注意を払う必要があり、このあたりをさらにミスなく効率よくご予約いただける仕組みを構築していくことが当面の課題となっています。
院内業務は時間帯による偏りがかなり改善されたため、繁忙時間帯におけるギスギスした雰囲気の改善がみられ、結果として細かなヒヤリハットを減少に繋げることができたのは、個人的に大きな気づきとなりました。
飼い主様の反応は当初戸惑いの声を頂戴しました。特に高齢の方の場合、朝早くに来院してできるだけ早い時間帯に診察を希望される傾向が強くみられます。予約を取るという手間がかなりハードルになった点は否めません。
診療の際に予約方法や、手順を示した紙を手渡すなどといった小さな周知をこまめに行っていくことで、かなりご理解を頂けたものと思います。こちらについても当初予約制を採用したことによる既存の顧客離れを懸念していましたが、想定よりも問題になることなく移行でき、逆に20~40代のネット環境に慣れた層からは歓迎されているように感じます。
現在、完全予約ではなく、予約優先制としています。予約なしでご来院された方には、どうしてもお待ちになる時間が多くなりご迷惑をおかけしているところがありますが、こまめな気遣いや病院案内などのコンテンツを作成して、できるだけ「待たされている」という心理を緩和させるための工夫を行うようにしています。
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※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。
この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。
これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。