女性獣医師の本音トーク　その37　Part１（①働く現場の生の声＋②院長への提言）

《シリーズ企画　臨床現場復帰までの軌跡　その３》～N女性獣医師のコーチングを活かしたリアルルポ　前編～

【獣医師になりたい！消えなかった強い思い】

Q：先生の経歴は興味深いですね。獣医師になった経緯を教えてください。

　「獣医師になりたかったので国立大学を受験したのですが、受からず、そのまま第２志望の学科に進学しました。

　仮面浪人という形で在籍し、卒業して、諦めて就職したほうが良いのだろうかと思ったのですが、当時お付き合いしていた彼（今のご主人）が『獣医大学を受けた方が良い』との勧めもあって、改めて浪人をして受験したところ、数年目で私大に受かりました。

　入学金もなかったのですが、偶然自宅が火事になって、火災保険のおかげで入学金ができて進学することができました。火事は嬉しくはないですが、神様の采配だと思っています。」

【学生時代から温めていた人生設計】

Q：先生は、学生時代を通常の獣医師の倍の期間持たれているわけですが、その分、何か思うことはありましたか？

　「はい、獣医師になるのが、計算すると３０歳だったのです。ですから、女性として、結婚、出産、子育てをするには、時間が短い。３０代までに、臨床を続けながら３人の子供を産んで、育てている。

　『４０歳からプロフェッショナルの道を歩む』という構想を学生時代から持っていました。」

【新卒後、育休をいただきながら続けられたのは理解のある院長のおかげ】

Q：新卒の後、選んだ病院は？

　「最初の岩手の病院を半年でやめました。主人の転勤で福島に引っ越しのためです。

　引っ越し先の福島県の小規模な病院で６年在籍しました。そのうちの３年が産休や育休の期間です。

　今思うと、本当にこの病院にいさせていただいて、助かりました。理解がある院長に出会えたことに感謝しています。」

【仕事と家庭の両立、なかなか思い通りにはいかない】

Q：でも、直近２年が専業主婦の期間というのは、何かあったのですか？

　「はい、その通りです。今までの直近２年間のブランクがあって、そこで専業主婦をしました。福島の動物病院が完全週休1日なのですが、家族の時間が持てなくて断念したのです。院長にパートタイムを希望したのだけれど、受け入れられませんでした。

　また、３人目育児の時に、もう少し休みたいと掛け合ったところ、無理と言われました。夫も福島で働いていることもあり、無理に続けるのはやめて、在宅でできる仕事なども探しながら、２年間を過ごしました。」

【もう一度臨床を！エージェントさんを通して動物病院を探す】

Q：その後、S先生は今の動物病院へ転職されるわけですが、どのようにして見つけたのですか？

　「最初は、自分の人脈を通して動物病院を探そうと思ったのですが、出会える場所に限界を感じていたところ、友人から『エージェントさん、よかったよ』と教えてもらいました。

　雇用する側からはお金がかかるので嫌がる院長さんもいらっしゃるようですが、私側は自分で探せない動物病院、自分の『家族との時間も大切にしたい』というニーズを満たしてくれる動物病院に出会うことができました。」

【新天地を求めて地元愛知県へ】

Q：愛知県は、S先生の地元ですよね。どんな動物病院なのですか？

　「分院が２つある、全従業員が６０人くらいいる、1.5次の動物医療の病院です。CTもあり、今まで勤務していたところとは全く違います。

　福島では、手術があまりなかったのですが、今回の病院は手術数が多いので、自分のスキルを磨くのに最適だと思い、まだ勤め始めたばかりですが、ワクワクしております。

　また、院長先生は、この病院では母親として働きながら子育てを両立する女性獣医師は私が初めてということなので、色々相談しながら、長く働けるように協力いただいて助かっています。」

Q：シフトはどのような感じですか？

　「週休2日、通常勤務ですと、朝８：３０〜夜２０：００までの勤務なのですが、時短にしていただき、１８：００で上がらせていただいております。

　とはいえ、１８：００には帰れておりませんが、これからうまく調整できるように頑張るところです。家庭の方も、子供たちも主人も新しい生活でみんなそれぞれが頑張っています。」

　※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

　この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

　これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。