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獣医師として長く働くために『寛容さ』は重要

女性獣医師,復職,動物病院,母親,家族,協力

女性獣医師の本音トーク その37 Part2(①働く現場の生の声+②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

《シリーズ企画 臨床現場復帰までの軌跡 その3》~N女性獣医師のコーチングを活かしたリアルルポ 中編~

【編集部:注】


前編ではS先生が獣医師になるまでの経緯、そして産休・育休を経てもう一度臨床現場へ就職するまでのお話を伺いました。今回の中編(Part2)では母親獣医師として伝えたいことを赤裸々に語っていただきました。


※今回の記事は、前・中・後編の3つに分かれています。


■<前編>の記事はこちら


■<後編>の記事はこちら

 
【ケース 3】 S女性獣医師(30代)

国立大学を出て、諦めきれずに浪人し、再受験し獣医大学に進学。30歳で卒業し、臨床3年経験後、3人の産休・育休をしながら臨床を続け、1年ほど仕事をストップ。
この春、実家(愛知県)に引っ越し、新たに臨床医としてスタートしたところ。
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【パートナーや家族の協力に感謝】

Q:S先生のお話をお聞きして、ここまで先生を応援してくれているご主人やご家族の存在が大きく感じるのですが、いかがですか?

 

 「本当に、学生時代から付き合いがある主人がいるおかげで私が獣医師でいられているし、愛知に引っ越すときも、彼は転職をしてくれました。大変ありがたいと思っています。

 また、実家の母が子供たちを見てくれています。家族の応援があれば、できないことはないと思います。まず、家族を巻き込み丸ごと幸せになる、ということができると色々な可能性が開けてきていると思います。」

 

【母親獣医師として職場の位置】

Q:職場に復帰してからの仕事はどうですか?

 

 「最初、予防中心でやってくださいと言われました。

 時短で帰るので、昼休みに電話番をするよう言われ、やっていました。

 手術なども楽しみにしていたのですが、夜遅くまでいられないので、責任のある仕事はなかなか任せてもらえないのかな、と疎外感を感じたこともありましたが、『お昼の電話番をしていると、手術はできないですか』と聞いたら、『そんなことはありません』というお返事をいただき、つい先日、オペに入ることができました。

 不安があったら、聞いたりコミュニケーションを取りながら、良い方向へ自分次第でしていけると思っています。」

 

 

Q:職場では、人間関係はうまくいっていますか?

 

 「比較的、うまくいっていると思います。」

 

 

Q:今後、どんなことをして行きたいですか?

 

 「東洋医学、統合医療に興味があって、病院内に1部門立ち上げたいなあ!という目標があります。飼い主さんに東洋医学・統合医療での治療の選択肢を増やし、私も選択肢が多い獣医さんになりたいなと思っています。

 コロナになりたてくらいの時に、「セミントラが入手できない」ことがあり、慢性腎臓病の猫ちゃんにどうしよう、となって現場で困りました。他に手立てがあれば、東洋医療などがあればと思いました。

 この経験で、今の獣医療は西洋医療に頼りきっていると思ったのですが、もちろん、このことはきっかけであり、単純に西洋医療以外に興味があります。東洋医療などは、西洋医療とは考え方の根本から違うところがあり、奥が深いです。

 

【母親獣医師として、院長先生に伝えたいこと】

Q:全国の院長先生に伝えたいことがあればお願いします。

 

 「女性獣医師として長く働いていくために、私が思うのは、動物病院には寛容な雰囲気、寛容さが欲しいです。今の院長先生も、とても寛大なのですが、2人のお子さんの子育てに関わっているから考え方が変わってきたのかな?と思っています。

 福島の院長も子育てしながらだったから、なんだかんだと6年勤務できました。

 子育て経験があると院長先生の考え方が変わるのかな、と思います。

 実際、いくつかの動物病院に面接に行ったのですが、『獣医は命相手だから、休みがなんだとか、家族がどういう状況でも休まないのが当たり前だから』と言う先生もいらして、わかるんですが、そういう考え方だと長くは働けないなあと思いました。

 様々な考え方があると思いますが、女性獣医師を雇用するのはもちろん、国籍、性別、年齢などに寛容な職場はいいなと思いました。

 

 長く勤めるのに大切な病院環境については、一緒に働くスタッフも同じく大切です。

 人に恵まれているな〜と感じるのは、休みがちゃんと取れて、お給料がもらえて、体に余裕があると人は寛容になれます。みんなに余裕があるといいです。

 例えば、今の病院の査定項目で、『飼い主の悪口は言わない、他のスタッフの悪口は言わない』というのがあります。おとしめあうというのはないなあと思うし、病院のクレド的なものがあるのはとても良いと思います。」

 

Q:ありがとうございました。

 

 

 

 今回のS先生のお話で、先生の縁について、先生を中心としてパートナーや家族が協力してくれ、先生らしい生き方を展開されているのが素敵に思いました。

 今後、病院内をS先生色で展開されていくのが、楽しみです。S先生の統合医療部門が立ち上がるのを楽しみにしております。

 

 

 

■この記事には<後編>があります。<後編>の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。