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【提言】復職する時にあったら嬉しいシステム

女性獣医師,復職,動物病院,臨床復帰,責任,システム

女性獣医師の本音トーク その23 Part3(②院長への提言)

 2022年1月、メディカルプラザの人材紹介事業ベテリナリオは、現在の人材採用難をどうすれば改善の方向に向けさせられるのかを考え始めました。
 そして、その解決の大きなカギとなる存在に気付きました。
 それは、女性獣医師の存在です。
 メディカルプラザのこれまでのコンサル経験から、「女性獣医師は40歳までに80%以上の方が臨床現場をやめてしまう」ことが分かっています。
 しかしながら、なぜ臨床現場から離れてしまうのか、その理由は調べてもどこにもありませんでした。
 そこで、ベテリナリオが独自に調査することにしました。
 ここに掲載している原稿は、女性獣医師先生がご執筆頂いた原稿をできうる限り「そのまま」掲載しています。先生方にも実際にあった出来事などを事実に即して記述して頂くよう、お願いしております。「匿名」での掲載が多いのも、このためです。

社会人経験がある女性獣医師目線で見た臨床業界 ~復職する時にあったら嬉しいと思うシステムを提言します その3~

【編集部:注】


今回の記事は全部で4つのパートに分かれています。


Part1、Part2では主に学生時代のお話を伺いました。今回のPart3では女性獣医師の臨床現場への復帰に対して感じたことを書いてくださっています。


Part1『獣医学生時代に感じた女性獣医師を取り巻く環境』はこちら


Part2『学生時代に獣医業界全体に対して感じたこと』はこちら


Part4『さいごに(まとめ)』はこちら

○匿名女性獣医師

私は現在、休職中の動物園獣医師です。獣医師として働く前、一般企業で8年ほど働いていた経験があります。
経歴について言及させていただいた理由は、私が獣医学生だった時の年齢がすでに30代であったことをお伝えしたいからです。

女性であり、一般企業経験者であり、臨床獣医師である私の目線で、自分や近しい友人たちの体験を通して感じた、女性獣医師を取り巻く環境について書かせていただきます。
女性獣医師,復職,動物病院,臨床復帰,責任,システム

3.女性獣医師が臨床復帰するために

 私は獣医学科を卒業後、病院勤務ではなく、動物園獣医師になりました。

 就職した頃、職場にひとりの女性獣医師が訪ねてきたことがあります。園内の動物病院でボランティアをやらせてもらえないか、と言うのです。話を聞くと、彼女は以前、動物病院に勤めていたものの、出産を機に臨床を離れ、今は働いていないとのことでした。子供が小学生にあがり、獣医師として何かをしたいけれど、動物病院に戻るのは怖い、この動物園は近いし、ボランティアとして獣医師のお手伝いならできると思った、というような事でした。

 残念ながら色々な事情でお断りしたのですが、この「動物病院に戻るのは怖い」「臨床に戻るのは怖い」というのは、しばしば聞く言葉です。

 

 私が学生時代に実習させていただいた動物病院の中にも、夫婦共に獣医師で、夫婦で立ち上げた動物病院がありました。妻は出産を機に現場を離れ、経営面をサポートしているということだったので、院長に「奥様が診療することはないのですか?」と聞いたところ「臨床はもう怖いって言って出てこない。」と言っていました。

 

 他にも、妻が獣医師免許保有者という方に出会ったことがあります。やはり出産を機に病院を離れ、10年以上経過してしまったため「もう臨床は怖い」とのことで、今は全く獣医師免許の関係ない近所の飲食店でパートタイム勤務をしているとのことでした。

 この「臨床に戻るのは怖い」という話は、近くでも遠くでも、似たような話を数え切れない程聞いてきました。

 そして、私自身が現在「臨床に戻るのが怖い」という気持ちを強く実感しています。私は家庭の事情で休職中ですが、すでに1年半ほど臨床現場から離れています。

 

 

 臨床現場に戻る怖さには色々な要素があると思いますが、自分なりに分析すると、まず一番の恐怖は「命を預かる責任への怖さ」だと思います。

 現役で臨床獣医師をしている時は、24時間365日この恐怖を抱えているため、反対に麻痺しているような面があるのですが、いったん離れてしまうことで、この一種の脳内麻薬効果が切れてしまいます。

 もちろん、精神的な面だけでなく、現場を離れている間に体力は衰え、私の年齢だとそろそろ老眼も気になり出し、いつも使っていた薬の名前すら思い出せないような脳の鈍りを感じます。職場で鍛錬を積みながらの加齢であれば、それほど大きなハンデにならないでしょうが、離職中の加齢は致命的に感じます。

 

 そして、さらに怖いのは人間関係です。個人の都合で業界から離れていた自分を、業界が再度迎え入れてくれるのだろうか、というような不安です。

 1年半程度でこれなので、出産などを機にさらに長期間、専業主婦や他の仕事をしていた女性獣医師にとっては、もしも動物病院の待遇が、企業や公務員並みになったとしても、戻るには壁が高すぎると思います。

 

 

 

 個人的に、自分も含め一度臨床を離れた獣医師が、臨床に戻りたいと考えた時、あったら嬉しいと思うシステムを述べさせていただくと、下記のようなものがあります。

 

 ・再教育の制度が欲しいです。座学では、ここ数年で使われるようになった薬品や、標準治療の変更などを教えていただけるとありがたいです。実技では、簡単なオペでさえ、もう自分の手が思い通りに動くか不安なので、新人に戻って一から教えていただきたいです。

 

 ・簡単な症例から担当させていただき、時間と気持ちに余裕を持った診療をさせていただきたいです。現役の獣医師には簡単でも、一度離れてしまうと、調べなければならない事が山ほどあると思います。できれば、調べものも勤務時間内にできると、家庭と仕事の両立がしやすいと思います。

 

 ・産休/育休の制度を取り入れていらっしゃる病院では、休みの間の人員補充や、他の獣医師たちの待遇を考えていただきたいと思います。ただでさえ復職が怖いのに、職場の空気が「あなたが休んだせいでみんながとても苦労した。」というようなものだと、心が折れて辞めてしまうように思います。退職ではなく休職の場合、院長などが定期的に気軽に電話やLINEなどで近況を教えてくださると、休んでいる獣医師の気持ちもかなり軽くなると思います。

 

 ・臨床現場を離れた獣医師でも、採用などの情報をもっと取り入れやすいようにしていただけるとありがたいです。潜在獣医師向けの情報サイトなどがあればいいのになぁと思います。そうした情報サイト上で、定期的に勉強会なども開催してくださると、かなり心強いです。

 

 ・産休/育休などで一度離職した女性獣医師で、復職を果たされた方がいらしたら、その方の体験談などを聞かせていただける機会があると嬉しいです。

 

 

 

■この記事はPart4へと続きます。Part4の記事は、こちらからアクセスしてください。
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 ※メディカルプラザ・ベテリナリオは、事業承継を通じて、全国10000件の動物病院院長へ直接「情報誌」を発行し続け、2000人以上の院長、獣医師と直接お会いしてきました。

 この情報発信と直接的な繋がりによって、女性獣医師の本音を病院院長に届けて、人材採用難解決の提案をして参ります。

 これにより、職場改善や経営改善に取り組む動物病院をもっともっと増やしていきたいと考えています。